2026年5月31日日曜日

表示される”と“正しく測れる”は別物よ ― 分析天秤の最小秤量値を解説


この分析天秤は0.0001gまで表示できるから、1つ上の桁の0.001gが秤量の最小秤量値になる。

新人時代、職場(環境計量事業所)の先輩にそう教わったのよね…
でも、結論から言うと、その考え方はかなり危険。
…というか、基本的には「間違い」。

なぜなら、表示される桁(最小表示)と、正しく測れる限界(最小秤量値)は、まったくの別物 だから。


今回は天秤の最小秤量値について、初心者向けに解説していく。


0.天秤の最小秤量値の求め方


細かい理屈はいいから、求め方を先に教えなさいよ!

そんなせっかちな読者は、次のa~dの手順を試してみなさい。

a. 分銅を用意する。
(普段よく測定する重さに近い分銅を使うこと。※)

b. 分銅を連続10回で秤量する。
(分銅を載せ降ろししながら、測定結果を記録する)。

c. 標準偏差を求める。

d. 次の式から最小秤量値を求める。

最小秤量値 = 2000 × 標準偏差

※本来は複数荷重域で評価することが望ましい。ただ、今回は初心者向けとして簡易的な方法を紹介している。

標準偏差の求め方が分からない!?
Excelのセルに ”=STDEV.S ”と入力すれば計算できるわよ。

1.最小秤量値とは?

天秤には、どれだけ丁寧に測定しても避けられない“測定値のバラツキ”があって、このバラツキは微量になるほど相対的に大きな誤差として現れるの。

たとえば、±0.001 g のバラツキでも、100 g を量るなら影響は小さい。
でも、0.010 g を量る場合は無視できない誤差になる。

だからユーザーは、「どこまでの誤差なら許容できるか」を先に決める必要があるの。
そして、その許容範囲内で測定できる最小の質量を「最小秤量値」というのよ。

ちなみに、"0.天秤の最小秤量値の求め方" で紹介した計算方法は、誤差範囲を0.1%に設定している。

先輩みたいに、「どの程度の誤差まで許容できるのか」を示さないまま、「0.001 g まで測れる」と言い切る人は、要注意人物だから。
そんな人に分析を語らせたらダメ。

2.繰返し性とは?

さて、前項で出てきた“測定値のバラツキ”について、もう少し説明しておく。

これは、「同じ人が、同じ天秤で、同じものを、短時間に何度も秤量したときに生じる、“数値のバラツキ”」のこと。 つまり、「おなじものを測っているのに、毎回まったく同じ値になるとは限らない」ってことね。

...え?
「機械なんだから毎回ぴったり同じ値になるんじゃないの?」って?

甘いわね。現実の測定はそんなに単純じゃないの。
天秤の測定では、どんなに高価な機種を使っても、どんなに熟練した人が測定しても、“絶対にゼロにできないバラツキ” が必ず存在する。
そして、そのバラツキの大きさを評価する重要な指標の1つが「繰返し性」なの。

ちなみに、" 0.天秤の最小秤量値の求め方 " で計算した「標準偏差」が、このバラツキの大きさに相当する。

大切なのは、「バラツキを無理やり消そうとすること」じゃない。
「どの程度のバラツキが存在するのかを把握して、それを踏まえて測定結果を判断すること」なの。

3.天秤の最小秤量値の求め方

さて、ここまで読んだなら、「じゃあ実際、最小秤量値ってどうやって決めるの?」って気になってる頃よね。最小秤量値は、繰返し性から求めた標準偏差sと、あらかじめ設定した誤差範囲を使って計算する。
式で表すと、こんな感じ。

最小秤量値 ≧ 2× s × (100/誤差範囲(%))

ここで、
s:繰返し測定から求めた標準偏差
誤差範囲 (%):ユーザー側が設定した許容管理幅
を表している。

ちなみに、この「2×標準偏差」というのは、測定値のバラツキを95%程度の範囲で見積もるために使っている。

...まあ、「なんで2なの?」って深い追いしたくなる気持ちは分かるけど、今回は初心者向けの記事だから、その辺はまず "そういう考え方をするんだな" くらいで十分。

4.直線性とは?

天秤の最小秤量値を求めるだけなら、繰返し性だけで十分。
でもね、天秤の性能を示す指標は繰返し性だけじゃないの。
そこで次に出てくるのが、「直線性」という考え方。

直線性とは...
「全測定範囲において、重さと表示値の関係が直線的になっているか」を評価する性能のこと。

ちょっと何を言っているのか分からない?
それじゃあ、定規📏で考えてみなさい。

定規の目盛って、正しく等間隔に刻まれているのが当たり前でしょ。
もし、途中で目盛間隔が広かったり、狭かったりしたら、安心して長さを測れないよね?

天秤の直線性も、イメージとしてはそれと同じなの。

重さと表示値の関係が直線的なら、「どの荷重域でも、一定の間隔で値が増加する」ことを意味している。
だけど、荷重によってズレ方が変わる場合――つまり直線性が悪い場合は、ある荷重域だけ誤差が大きいとか、 荷重によって感度が変わる、みたいな状態が起きる。

目盛幅がバラバラだと、正しく測れないのは “はかり” も同じ。

5.直線性試験って、何のためにやるの?

さて、ここまで直線性について説明してきたけど、「じゃあ、直線性試験って結局何のためにやるの?」って話よね。
もう一度整理すると、直線性確認によって分かるのは、次の3つ。

・荷重ごとの表示誤差
・荷重域による誤差変化
・使用可能範囲

つまり、「どの荷重域なら、信頼して測定できるのか」を確認するための試験なのよ。
これによって、実務上は次のような判断ができる。

・「この誤差なら、管理基準内だから使用可能」
・「この誤差域だけ誤差が大きいから、ここでの測定は避けよう」
・「この範囲なら、要求精度を満たせる」

...ほら、ただの点検じゃないでしょ?

特に重要なのが、「荷重域による誤差の出方が変わる」という点。
例えば、0〜50 g は問題ないけど、100 g付近から急に誤差増大みたいなケース。
この場合、「この天秤は100 g近辺の測定には向いていない」という判断ができる。

つまり、直線性試験って、「合格/不合格」だけを見るものじゃないの。
“どの範囲なら信頼して使えるのか” を把握するための試験なのよ。

直線性、一応点検したからヨシ!

こんなノリで終わらせるの、本当に危ないんだから。
だって、荷重域によっては誤差が増えているかもしれないでしょ?


関連記事


参考資料

日本薬局方, 一般試験法 9.62 計量器・用器
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001268435.pdf

OHAUSのホームページ
https://japan.ohaus.com/ja-jp/about-us/news/minimum-weight-specifications

2026年5月3日日曜日

天秤の日常点検とは?-管理許容誤差と分銅選定まで-実務レベルで解説

分析天秤の日常点検は、測定値の信頼性を確保するうえで不可欠な作業よ。
……まあ、ここを甘く見てると後で痛い目を見るけどね。

本記事では、実務で必須となる点検項目、分銅の選定方法、管理許容誤差の考え方について解説するわ。

・何を点検すればいいの?
・管理許容誤差って、どうやって決めるの?

……そういうところで手が止まる気持ち、分からなくもないわ。
だから、現場目線でちゃんと整理してあげる。しっかりついてきなさい。


1.天秤の日常点検項目

必須項目は次の3つよ。どれも基本中の基本なんだから、手を抜かないことね。

① 水平確認
備え付けの水準器を確認し、気泡が中心円の内側にあることを確認する。

……見た目だけ中心に入ってればいいってわけじゃないから。アジャスタが浮いた状態だと、実際にはガタつくこともあるのよ。ちゃんと安定しているかまで確認しなさい。

② 標準分銅による1点チェック
普段測定している試料の質量に近い分銅を使用すること。
分銅を皿に載せ、表示値を記録し、分銅の公称値との差が管理許容誤差以内にあることを確認する。

……ただ載せて終わり、なんて雑なことしてたら意味ないわよ。ちゃんと記録して評価しなさい。

③ ゼロ点確認(戻りゼロ確認)
分銅を降ろした後、表示が「0」に戻ることを確認する。

……ここを見落とす人、意外と多いのよね。最後まで気を抜かないこと。


2.どんな分銅をのせるの?

日常点検に使用する分銅は、
「必要精度の1/3以下の最大許容誤差を持つもの」を選定する。

……ここ、なんとなくで選んでる人いるけど、ちゃんと根拠を持ちなさい。

分銅の選定には、次の2つを明確にする必要がある。

  • その天秤で何を測定するのか
  • どの程度の誤差まで許容できるのか

つまり――必要精度はユーザー自身が決めるの。ここ勘違いしないでよね。


<具体例>
まずは前提条件から整理するわ。

  • 秤量対象:250mg(含有試験)
  • 秤量瓶:50g
  • 秤量後、前処理・希釈を行い、測定装置で測定
  • 分析結果の許容誤差:±5.0%
    (例:目的成分が100ppmの場合、95~105ppmが許容範囲)

結論から言うと、今回の条件では
F2級以上の50g分銅(±1.0 mg)を使用するのが適切よ。

……理由、ちゃんと理解しておきなさい。


・秤量に割り当てる許容差
秤量・前処理・希釈・分析装置、各工程に誤差が含まれることを考慮する。
ここでは全体の許容差(±5.0%)のうち、1/4を秤量に割り当てるとすると、秤量の許容差は ±1.25% になる。

注意!
本例では説明を分かりやすくするため、全体の許容差を単純に4分割している。
……本来は各工程の不確かさを評価して、きちんと合成するのが正しいやり方だからね。そこ、雑に済ませていい話じゃないわよ。


・秤量の許容差を質量に換算

250 mg × 1.25% = ±3.13 mg

👉これが秤量に許される誤差。


・分銅の選定
「秤量の許容差の1/3以下」というルールより、

3.13 mg ÷ 3 = 1.04 mg

したがって、分銅に求められる最大許容誤差は ±1.04 mg以下となる。

注意!
分銅の最大許容誤差を「秤量許容差の1/3以下」とする明確な単一規格は存在しない。
この考え方は、分銅の誤差が測定結果の判定に与える影響を十分小さく抑えるための実務上の指針である。
……要するに、分銅のせいで判定がブレるようじゃ意味ないってこと。だから余裕を持たせてるのよ。


・分銅質量の選定
実際の秤量条件(秤量瓶50 g+試料250 mg)を考慮し、日常点検には 50 g分銅を使用する。


・分銅等級の確認(JIS B 7609
50 g分銅の最大許容誤差は以下の通り。

  • F1級:±0.30 mg(十分な余裕あり)
  • F2級:±1.0 mg(適合するが上限に近い)

以上より、今回の条件では F2級以上の50 g分銅を使用するのが適切となる。

ほら...ちゃんと計算すれば、感覚じゃなくて理屈で選べるでしょ。

3.管理許容誤差はどのようにして決めるの?

管理許容誤差は、この天びんで、どこまでの誤差なら業務上許容できるか という使用目的から決めるもの。

…分銅を何回か測定して得た標準偏差(繰返し性)と同じだと思ってるなら、それは完全な勘違いだから。

たとえば、秤量対象が250 mgで、秤量に割り当てる許容差を±1.25 %とする場合、秤量誤差の管理許容誤差は

250 mg × 1.25% = ±3.13 mg になる。

日常点検では、この値を基準にして
「50 g 分銅を載せたときの表示値が、真の値から ±3.13 mg 以内なら合格」といった判定を行う。

注意!
JIS B7611-1に規定されている最大許容誤差は、あくまで天秤の性能基準。管理基準とは別物なんだから、同じものとして扱わないこと。

4.戻りゼロ確認を行う意味を教えて!

戻りゼロ確認は、ただ「0に戻るか」を見るだけじゃないの。
……ここを軽く見てると、気づかないうちにズレた測定を続けることになるわよ。

・「ヒステリシス(履歴現象)」の有無を確認する
天びんの内部センサーは、重いものを載せるとわずかに変形し、降ろすと元の形に戻る。

  • 正常な状態: センサーが完全に元の形に戻り、表示も「0」になる。
  • 異常な状態: センサーに歪みが生じたり、内部機構に摩擦や引っ掛かりがあったりすると、表示が「0.2mg」のように値が残る。

この確認によって、センサーがスムーズに動作しているかを判断できる。

・「ドリフト」の有無を確認する
温度変化や気流などの環境影響によって、何も載せていないのに表示値が徐々に変化する現象を「ドリフト」という。

たとえば、測定前は「0」だったのに、測定後に「-0.3mg」になっていた場合、測定中にゼロ点が動いた可能性がある。
この場合、測定値そのものが影響を受けていると判断する必要がある。


5.不合格のときの対応

標準分銅を載せた際の表示値が管理許容誤差を超えた場合、その天秤は不合格と判定する。
不合格が確認された場合、以下の対応を実施する。

……ここで見て見ぬふりなんて論外だから。ちゃんと対応しなさい。

① 使用の停止
当該天秤の使用を直ちに停止し、「使用禁止」などの識別を行う。

……使い続けるとか、あり得ないわよ。

② 再調整および再点検
内部調整(キャリブレーション)または外部分銅による調整を行った後、再度日常点検を実施する。
再点検で管理許容誤差以内に入った場合は、使用を再開できる。

③ 再不合格時の対応
再点検でも不合格となった場合は、修理または校正業者による点検・校正を依頼する。

……何度もズレるなら、もう現場でどうこうする段階じゃないでしょ。

④ 逸脱管理(Deviation)
不合格が発生した事実は、逸脱として記録し、原因調査を実施する。
(例:環境変動、操作ミス、機器劣化など)

……原因を曖昧にしたまま終わらせるの、一番ダメなやつだから。

⑤ 影響評価(Impact Assessment)
不合格状態で使用された可能性のある期間を特定し、前回の適合確認時点まで遡る。
その期間に実施されたすべての測定結果に対して、有効性への影響を評価する。

……ここサボると、その期間のデータの有効性、全部説明できなくなるわよ。

⑥ 是正処置(CAPA)
原因に応じて是正処置および再発防止策を検討し、必要に応じて手順書の改訂や教育を実施する。

……同じミスを繰り返すとか、許されないんだから。

※ ISO9001やISO/IEC 17025の要求事項に対応するため、記録の保存およびトレーサビリティの確保が重要である。

……ちゃんと記録を残しておきなさい。後から説明できないなんて、論外だから。


あとがき

ここまで読んだなら、天秤の日常点検で「何を見ているのか」はもう分かるはずよ。 ただ手順をなぞるだけじゃなくて、ちゃんと“意味”を理解して点検すること。それが一番大事なの。

日常点検は地味だけど、ここを疎かにすると、後で全部の測定結果に影響が出る。 ……まあ、そんなことになってから慌てても遅いけどね。

それと、管理許容誤差や分銅の選定は、決まった正解があるわけじゃない。 使用目的に応じて、自分で考えて決めるものよ。そこ、勘違いしないで。

もし迷ったときは、「この測定結果は本当に信頼できるのか?」って視点で考えてみなさい。 その問いにちゃんと答えられるなら、少なくとも大きく外すことはないわ。

……ここまでついてこれたなら、もう初心者って顔じゃないでしょ。 少しは自信、持ってもいいんじゃない?

べ、別に褒めてるわけじゃないけど。ちゃんとやってるのは認めてあげる。


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2026年4月11日土曜日

その秤量、本当に正しい?分析結果を狂わせる誤差要因と対策

秤量は試験・分析の“スタート地点”になる基本操作。
ここがいい加減だったら、結果の信頼性なんてガタガタよ。

電子天秤の測定原理、ちゃんと理解してる?

天秤に試料をのせると、その重さ(重力)で計量皿が下に沈むでしょ?
電子天秤は、その重力を電磁石の磁力で打ち消して、皿が元の高さに戻るようにしてるの。
で、そのときに必要な電流の大きさを測って、「これくらいの質量ね」って表示してるってわけ。

重力の大きさは、重力加速度と物体の質量の積で表すから、電子天秤は「重力加速度」に依存してることになるの。
だから、設置場所が変われば――緯度とか高度によって――測定値にほんのちょっとだけ差が出るのよ。

…つまり、緯度とか高度の違いで重力が変わるから、測定される「重さ」も変わっちゃうってこと。

…で、このまま何もしないとどうなると思う?
当然、ズレた値のまま測り続けることになるわ。
だから分銅を使って校正して、その場所の条件に合わせて補正する必要があるのよ。

……まあ、最近の分析天秤はとても優秀で自動校正機能がついてるし。
…だからって油断していいわけじゃないんだからね。

水平とれてる?

天秤って水平じゃないと、重力の伝わり方が変わっちゃって、測定値にズレ――しかも系統的な誤差が出るのよ。

「なんで水平ズレで誤差が出るのか?」って?

理想的な水平状態だと、試料にかかる重力はまっすぐ下、つまり鉛直方向にだけ働くの。その力がそのまま検出機構に伝わるから、正しく測れるわけ。

でも、天秤が傾いてるとどうなると思う?

力の一部が横に逃げるの。
つまり、検出機構にちゃんと伝わる力が減るから、表示される値は本当より軽くなるの。

秤量する前に、水準器を見て水平を確認すること!
これ、基本中の基本なんだから。


温度の影響、理解してる?


「素手で触ると手の脂がつくからダメ」ってドヤ顔で言う人、いるでしょ?
あれね、間違いとは言わないけど…本質わかってないのよ。

皮脂で0.1~0.5mgくらい増えることはある。
でもね、それよりヤバいのは“温度”のほう。

分析天秤はとっても高感度で、周囲の温度が1℃変わるだけでも約1~3 ppmほどの誤差が生じることがあるの。
特に注意したいのが、試料や容器の温度が周囲より高い場合よ。

温かい試料や容器のまわりでは空気が温められて上昇し、対流(上昇気流)が発生する。 その空気の流れが試料や秤量皿に当たることで、下から持ち上げるような力が働くの。

するとどうなると思う?
――表示値は実際より軽くなるのよ。

つまり、まだ温かい試料をそのまま量ると、見かけ上“軽く”測定されてしまうってわけ。

ちょっと想像してみなさいよ。

200gのガラス容器に、0.1gの試料を量ろうとしている。
で、あんたの手で温まった容器をそのまま天秤に置いて、「Tare」って…
はぁ、雑すぎ。

その時点で容器は冷えながら状態が変わってるの。
仮に温度が5℃変化したら?誤差は±1~3mgよ。

…0.1gに対して±1~3%のズレ。これ、無視できると思ってる?...甘いわね。


静電気対策

「なんか安定しないな~」って思ってる原因、だいたいこれだったりする。
じゃあどうするか。対策はちゃんとあるわ。
静電気対策は、“予防”と“除去”の両方で考えるのが基本。

  • 室内の湿度は45~60%くらいに保つこと。
  • 除電機(イオナライザー)を使って、帯電した試料や容器を中和する。

それからね、使う器具も見直しなさい。

  • 樹脂製の容器やスパチュラ、薬包紙はできるだけ避ける。
  • 金属製のスパチュラや秤量皿を使う。
最後に言っておくけど――
天秤はちゃんと清潔にしなさい。

こぼした試料や試薬をそのまま放置すると、コンタミになるし、故障の原因にもなるし、当然誤差だって出るわ。いいこと一つもないんだから。

…それにね、天秤を見れば、その会社のレベルってだいたい分かるのよ。
雑に扱われてる天秤なんて、見てるだけでため息が出るわ。


参考資料

宮下文秀:ぶんせき, 3, 94 (2020)
https://www.jsac.or.jp/bunseki/pdf/bunseki2020/202003p094.pdf

菅野将弘:環境と測定技術, 47, 18 (2020)
https://www.aandd.co.jp/pdf_storage/tech_doc/balance/t_balance_jemca_2020_47_1.pdf

横河エコサイクルソリューションズ ホームページ
https://www.yokogawa.com/jp-yes/use-info/column/82/?keyword=&category=a-cat-08


関連記事

2026年3月29日日曜日

CHN分析で無機物を測っちゃいけない理由「それ装置トラブルの原因だから!」


ねえ、まさかCHN分析装置で 炭酸塩とか水分とか硝酸塩が測定できる、なんて思ってないわよね?
……はぁ。ここ、かなり重要だからはっきり言うわ。 無機物は測定対象外‼
勘違いしないで。 仕方ないから、その理由をちゃんと説明してあげる。


原理的な問題:「ガスが出ればOK」が間違いな理由

そもそもCHN分析装置って、有機化合物の組成確認とか純度評価に使う装置なの。
原理はすごくシンプルで、

「試料を酸素雰囲気で完全燃焼させて、発生したガスを測る」。

それだけ。
するとね、化学の基礎がある人ほど、こんなこと考えがちなのよ。


無機窒化物や無機炭化物のような無機物は燃焼しないからガス化しない、それはまあ理解できる。
でも、「硝酸塩や炭酸塩は熱分解でガスが発生するから、測れるんじゃない?」


たしかに、炭酸塩や硝酸塩、結晶水なんかは、加熱すればCO₂やNOx、H₂Oを出すわ。
一見すると、CHN分析装置で測定できそうに見えるのも無理はない。
でもね、CHN分析装置の本質は、単にガスを測ることじゃないの。

「有機物を一瞬で完全燃焼させること」

そこに全振りした分析手法なのよ 。
完全燃焼するからこそ、試料中の炭素・水素・窒素が完全かつ定量的にCO2・H2O・N2へガス化するように設計されているの。

装置はね、ガス検出のピークが出始めてから一定時間、もしくは信号がベースラインに戻るまでを測定する。
でも、炭酸塩や硝酸塩の熱分解って、有機物の爆発的な燃焼に比べると反応がすごく緩やか。
そのせいでピークのテール(ピークの引きずり)が長引くと、装置が
「はい終了~」
って勝手に判断して、計算を打ち切っちゃうことがあるの。
つまり、無機試料の場合、目的成分が完全かつ定量的にガス化する保証はないわけ。
……わかった?


装置へのダメージ:装置担当者が泣くリスク

無機物が測定対象外な理由は「測れる・測れない」以前に、装置トラブルを引き起こすリスクがある。


★ルツボと燃焼管の汚染

たとえばLeco製のCHN分析装置では、
試料は加熱された燃焼管内のポーラス状坩堝に投入されて、純酸素気流中で燃焼される。
でも無機物を入れたらどうなると思う?
燃えないから、そのままルツボに蓄積するのよ。
蓄積した試料は燃焼環境を悪化させるし、ガスの流れを物理的に邪魔するし。
当然、分析結果はボロボロになるわ。


★試薬(還元銅)の寿命が激減

通常、発生したNOxは還元銅によってN2還元されるし、燃焼に使われた余剰酸素も酸化銅として吸収される。
でも無機試料を測ると、本来、有機物の燃焼に消費されるはずの酸素が消費されない。
その結果、還元銅が大量の酸素と反応することになって、一気に酸化。
……試薬寿命、即終了よ。


じゃあ、実験室で無機物の焼成過程で発生するNOxを測定したいときはどうするの?

……仕方ないわね。教えてあげる。

★ガス検知管法

酸素または空気を流した管状炉で試料を焼成して、アウトガスをサンプリングバックに捕集。
そこにガス検知管を挿入して、NOxの有無を簡易確認する。


★イオンクロマトグラフ法(JIS K 0104)

同じく管状炉で試料を焼成して、アウトガスを吸収液(過酸化水素水+硫酸)に通す。
NOxを硝酸イオンとして捕集して、その液をイオンクロマトグラフで測定するの。


CHN分析はね、
「ガスが出るなら測れる」
……なんて、そんな甘い話じゃない。
大事なのは
「ガスが出るかどうか」じゃなくて、
「完全燃焼によって定量できるかどうか」。
CHN分析は万能じゃないし、無機物はその前提を満たさない以上、測定対象外。
……頻繁に炉を落として、ルツボ交換とか試薬交換したくないでしょ?
だったら、余計なことはしないことね。

2025年10月27日月曜日

環境計量士と吸光光度法(2)

◆ Lambert–Beer(ランベルト・ベール)の法則

吸光度と「物質の濃度」および「光が通る距離(セルの厚さ)」との間には比例関係があり、これをランベルト・ベールの法則(Lambert–Beerの法則)といい、次の式で表せます。

吸光度を A、物質の濃度を c (mol/L)、セルの厚みを l (cm) とすると、

A = εcl 

※ここで ε はモル吸光係数とよばれる値で物質固有の「光の吸収しやすさ」を示します。この値は、標準試料の濃度と吸光度の関係(検量線)を作ることで求めることができます。


◆  吸光度とセルの厚さの関係

たとえば、物質の濃度が非常に低い場合、通常の 1 cm セルでは吸光度が小さすぎて正確に測定できないことがあります。 そんなときは、セルの厚さを長くすることで感度を上げることができます。

  • 2 cm のセルを使えば吸光度は 2 倍に
  • 5 cm のセルを使えば吸光度は 5 倍に

という具合に、セルの長さに比例して吸光度も大きくなります。


第75回(2024.12)
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 (解説)

1.誤り。
透過光 = 入射光(透過前の光)のとき、透過率は 透過光 / 入射光 より、1になります。
一方、吸光度は透過率を常用対数で表記したものなので、吸光度は0になります。

2.誤り。
測定系の光路長を2倍にしたとき、吸光度は2倍になりますが、透過率は2倍になりません。
吸光度が2倍になると A×2 = -logT2 より、透過率は2乗になります。

3.誤り。
透過パーセントが10%だから、透過率は0.1です。このときの吸光度は -log 0.1  より、1になります。

4.正しい
問題文は回りくどい言い方をしていますが、「同じ測定系を用いた場合(セルの光路長が一定の場合)、濃度を0.5倍にしたら、吸光度も0.5倍になりますか?」と聞いています。吸光度は溶液の厚さ(セルの光路長)と溶液の濃度に比例しますから、正しい内容です。

5.誤り
これも回りくどい言い方ですね。
「分析種 A のとき  A = εcl  、 分析種 B のとき  A = 0.5 εcl  になる。を定数としたとき、εcl = 0.5 εcl を満たすには右辺の c にどんな係数をかければいいか?」と聞いています。
もちろん、2です。


第73回(2022.12)
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 (解説)

問題文に「5.0×10-2 mol/l の溶液においてこの吸収ピークの透過率が1.0%であるとき・・・」とあるので、c = 5.0×10-2,  T = 0.01 になります。

(ヒント:T = I / I0,  log10 10 = 1)

これを  −log10 T = ε c L  に代入すると

−log10 10-2 = (5.0×10-2)ε L
2 log10 10 = 0.05 ε L  
ε L = 2 / 0.05
ε L = 40

次に T = 0.1 、上で求めた ε l = 40 を  −log10 T = ε c L  に代入すると

−log10 10-1 = c × 40
1 = c × 40
c = 0.025

正解は1


第70回(2019.12)
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 (解説)

1.誤り。
入射光の強度を2倍にしても透過率(透過光の強度/入射光の強度)は変化しません。また、透過率の常用対数が吸光度ですから、透過率に変化がなければ吸光度も変化しません。

2.誤り。
測定成分の濃度が2倍になると吸光度は2倍になります。繰り返しになりますが、透過率の常用対数が吸光度ですから、吸光度が2倍になると、A×2 = -logT2より透過率は2乗になります。

3.誤り。
吸光度は透過率の常用対数ですから、透過率が2倍になっても吸光度は2倍にはなりません。

4.誤り。
A = εc l において、A と c が定数のとき、ε を2倍すると l は2分の1になります。

5.正しい。
A = εc l において、ε と c が定数のとき、l を2倍にすると A は2倍になります。

正解は5


第61回(2011.3)
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 (解説)

「80%の光が透過した」とあるので、透過率 T は0.8

吸光度 A = - log T より
- log (8/10) = - ( log 8 - log 10 ) = - ( log 23 - 1 )

log 2 = 0.30 だから
- ( log 23 - 1 ) = - ( 3 × 0.30 - 1 ) = 0.10

以上の計算より、吸光度は0.10

モル吸光係数 ε が4.0 、光路長さが 2 、これらを A = ε c l に代入すると
0.10 = 4.0 × c × 2
c = 1.25 × 102

正解は2 

※ 高校数学Ⅱで学習した対数法則 r log a M = log a M r と log10 10 = 1 を使用します。

2025年10月26日日曜日

環境計量士と吸光光度法(1)

透過率と吸光度

光を使った分析では、「どのくらい光が通り抜けたか(=透過率)」と「どのくらい光が吸収されたか(=吸光度)」の2つが重要な指標になります。


透過率とは?

透過率 ()は、試料に当てた光(入射光)のうち、どれだけの光が通り抜けたかを示す割合です。入射光の強さを I0  、透過した光の強さを I  とすると、透過率は次の式で表されます。

T  I I0

光が溶液を通過すると、その一部が物質によって吸収されるため、一般に I0  >  I  となり、透過率は1を超えることはありません。

また、透過率を百分率で示した数値を透過パーセントとよびます。


◆  吸光度との関係

透過率から求められるのが 吸光度(A) です。
吸光度は、透過率の常用対数をとって次のように定義されます。

A = - log10 T

たとえば、透過パーセントが 100%(=1)のときは吸光度 A=0、
透過パーセントが 10%(=0.1)になると吸光度 A=1 になります。


第72回(2021.12)

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 (解説)

1.誤り。吸光度とは透過率を常用対数で表した数値です。
問題文にある「光が物質を透過する割合を、透過後の光の量と透過前の光の量との比で表したもの」は、透過率です。

正解は1。


第65回(2015.3)

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 (解説)

「透過率 = 透過光の強度 / 入射光の強度」ですから、問題文にある「透過光の強度が入射光の強度の 1/4 になった」とは、透過率が 1/4 になったという意味です。

吸光度は、透過率を常用対数で表したものですから、 - log10 (1/4) を計算すれば吸光度が求まります。

(計算)

高校数学Ⅱで学習した対数法則 r log a M = log a M r を用いて、

- log10 (1/4) = log10 (1/4)-1 = log10 4


4 = 22 だから、

log10 4 = log10 2 = 2 log10 2


log10 2 = 0.30 より、

2 log10 2 = 2 × 0.30 = 0.60

正解は2


2025年9月28日日曜日

環境計量士と pH 測定方法(2)

ここでは環境計量士(濃度)の試験対策として、 pH 測定方法に関連する出題頻度の高い内容を扱います。

JIS Z 8802 pH 測定方法 のまとめ

3.1 pH(ピーエッチ又はピーエイチと読む。)

・ガラス電極pH計によって測定される起電力から求められる値。

7.4 pH標準液の保存方法

・調製pH標準液は、上質の硬質ガラス又はポリエチレン製の瓶中に密閉して保存する。
・pH標準液は、一度使用したもの及び大気中に開放して放置したものは再度使用してはならない。

8.2.1 測定方法 準備

・検出部は水で繰り返し3回以上洗い、きれいなろ紙、脱脂綿などで拭っておく。
・(検出部が)特に汚れている場合には、必要に応じて洗剤、0.1 mol/L塩酸などで短時間洗い、更に流水で十分に洗う。
・長く乾燥状態にあったガラス電極は、あらかじめ一夜(例えば,12時間)水中に浸した後使用する。
・トレーサビリティが必要な場合には、認証pH標準液を用いなければならない。

8.2.3 測定

・試料溶液の量は、測定値が変化しない程度に十分にとる必要がある。
・pH値が11以上の測定に対しては、通常のガラス電極ではアルカリ誤差を生じ、その測定値が低く出るおそれがある。特に、アルカリ金属イオン濃度が高い場合には誤差が大きくなる。

 

第74回(2023年12月)
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 〔解説〕

1.誤り。よく出題される内容ですね。pH はピーエイチもしくはピーエッチと読みます。

正解は1


第70回(2019年12月)
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 〔解説〕

1.誤り。pH 標準液は、一度使用したもの及び大気中に開放して放置したものは再度使用してはいけません。なぜなら、標準液の一部は、二酸化炭素などを吸収してpH値が低下するからです。使用する際は小さい容器に必要な分量だけを取り分け、容器は直ちに密栓し、取り分けた標準液は直ちに使用し、使用後は必ず廃棄しましょう。元の容器に戻してはいけません。

2.正しい。規格の8.2.1に記載された内容です。

3.誤り。pH値が11以上の測定に対しては、通常のガラス電極ではアルカリ誤差が生じ、その測定値が低く出るおそれがあります。(アルカリ金属イオン濃度が高い場合、誤差が大きくなる。)

この場合、アルカリ誤差の少ない電極(強アルカリサンプル用pH電極など)を使用し、かつ、必要な補正(中性リン酸標準液と高 pH 標準液を用いて2点校正する。)をすることが望ましいです。

※ 高 pH 標準液として、炭酸塩を含まない0.1 mol/L水酸化ナトリウム溶液と飽和水酸化カルシウム溶液があります。

4.誤り。ゼロ校正には「中性リン酸塩 pH 標準液」を使用します。

5.誤り。トレーサビリティが必要な場合、認証pH標準液を使用して校正を行わなければなりません。

正解は2


第68回(2018年3月)
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 〔解説〕

1.誤り。ゼロ校正には「中性リン酸塩 pH 標準液」を使用します。

2.誤り。ガラス電極が特に汚れている場合には、必要に応じて洗剤、0.1 mol/L塩酸などで短時間洗い、更に流水で十分に洗います。固体膜電極であれば1200番程度の研磨紙で研磨が可能ですが、pH測定に使用するガラス膜電極では研磨はできません。

3.誤り。ガラス電極は、温度によって発生する起電力(電圧)の大きさが変化します。また、水などの溶液は、温度によってその電離平衡が変化するため、結果的に水素イオン濃度が変化します。

5.誤り。pH 標準液は、一度使用したもの及び大気中に開放して放置したものは再度使用してはいけません。

以上より、消去法で正解は4


第64回(2014年3月)
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 〔解説〕

1.正しい。規格の8.2.1に記載された内容です。ただし、取扱説明書で対処法を確認することを推奨します。

2.誤り。検出部は水で繰り返し3回以上洗い、きれいなろ紙、脱脂綿などで拭っておく。ただし、特に汚れている場合には、必要に応じて洗剤、0.1 mol/L塩酸などで短時間洗い、更に流水で十分に洗います。

3.誤り。一致させる必要はありません。検出器が十分に浸かり、測定値が変化しない程度の一定量以上の試料溶液があれば十分です。

4.誤り。pH計では、ガラス電極と比較電極との間の電位差を測定しています。

5.誤り。pH値が11以上の測定に対しては、通常のガラス電極ではアルカリ誤差が生じ、その測定値が低く出るおそれがあります。(アルカリ金属イオン濃度が高い場合、誤差が大きくなる。)

正解は1


第62回(2012年3月)
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 〔解説〕

1.誤り。pH 標準液は、一度使用したもの及び大気中に開放して放置したものは再度使用してはいけません。

2.誤り。pHは、ガラス電極pH計によって測定される起電力から求められます。

3.誤り。「pH」は法定計量単位として規定されていますが、「ペーハー」という読み方は規定されていません。「ピーエイチ」もしくは「ピーエッチ」と読みます。

4.誤り。有機酸塩の pH 標準液は、試料溶液の pH 値が7以下の場合のスパン校正に用います。

5.正しい。

正解は5

2025年9月22日月曜日

環境計量士と pH 測定方法(1)

ここでは環境計量士(濃度)の試験対策として、 pH 計の校正方法 と pH 標準液を中心に扱います。

pH 計の校正はゼロ校正→スパン校正の順番に行い、それぞれの校正で使用する pH 標準液は以下の表にまとめてあります。


 試料溶液の pH 値が7以下   試料溶液の pH 値が7を超える 
 ゼロ校正 ・中性リン酸塩
 スパン校正  ・フタル酸塩
・シュウ酸塩
・ホウ酸塩
・炭酸塩
・リン酸塩

スパン校正で使用する pH 標準液が5種類もあって覚えるのが大変ですが、試料溶液の pH 値が7以下の場合は有機酸塩、pH 値が7を超える場合は無機塩から調製された標準液を用いるのが特徴ですね。


第75回(2024年12月)
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 〔解説〕

試料溶液の pH 値が7を超える場合ですから、有機酸塩(シュウ酸塩とフタル酸塩)が含まれている選択肢を除外すると、5だけが残ります。

正解は5


第72回(2021年12月)
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 〔解説〕

試料溶液の pH 値が7以下の場合、有機酸塩の pH 標準液を用います。

正解は1


第66回(2016年3月)
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 〔解説〕

ゼロ校正には「中性リン酸塩 pH 標準液」を使用しますから、選択肢は1に絞られました。

正解は1


2025年8月31日日曜日

環境計量士と原子吸光分析法(3)

ここでは環境計量士(濃度)の試験対策として、原子吸光分析のバックグラウンド補正を扱います。

図のような駅のホームをイメージしてください。

この列車は、「光源(中空陰極ランプ)」を出発し、「検出器」まで向かいます。乗客は原子とバックグラウンド(BKG)ですが、ホームに乗客がいませんので、列車の乗客数は0の状態で終点の「検出器」に到着します。この状態が「吸光度0」です。

次の図では、ホーム上の乗客のうち、乗車口(原子が吸収する波長)に並んだ乗客が列車に乗り込み、乗車口に並ばない乗客は列車に乗れません。したがって、列車の乗客は原子と一部のBKGとなり、終点の「検出器」に到着します。

このように、中空陰極ランプを光源とする場合、原子蒸気による(特定波長の)吸収とBKG吸収が測定されてしまうため、測定対象物質の正確な吸光度を測定するためには、BKG吸収の影響を取り除く必要があります。

※ちなみにバックグラウンドとは、目的とする元素の原子蒸気以外を原因とする光の減光現象のことです。原子蒸気以外の減光現象の原因となるものとしては、その他の分子、粒子、ミスト、ラジカル、マトリックス由来の成分(未原子化成分や溶媒残留物)などが挙げられます。

・BKG吸収のみを測定する方法 (1)

連続スペクトルを発生する光源を使用してBKG吸収のみを測定する。

「光源(連続スペクトル光源)」を出発し、「検出器」まで向かう列車は「トロッコ列車」です。ホームの端から端までの長さ(スリット幅)があり、ホーム上の乗客の全員が乗り込もうとしますから、乗客のほとんどがBKGになります。

このように、連続スペクトルを発生する光源では原子蒸気による吸収はほとんど認められません。

※連続スペクトルを発生する光源として、重水素ランプ(D2ランプ)やタングステンランプが使用されます。重水素ランプは紫外部(180nm~350nm)、タングステンランプは350nm~800nmの範囲で強い連続スペクトルを発光します。

・BKG吸収のみを測定する方法 (2)

「ゼーマン効果」を利用してBKG吸収のみを測定する。

原子蒸気に強い磁場をかけると、その原子蒸気が吸収できる光の波長(吸収線)が分裂して位置が少しズレる現象を「ゼーマン効果」といいます。

駅のホームで例えるならば、磁場によって乗車位置が左右に分裂します。しかし、列車の停止位置(光源からの光の波長)は変化しませんから、乗車位置に並ぶ乗客(原子)は列車に乗れません。つまり、磁場があるとBKGの吸収のみが検出器に届きます。

※磁場は永久磁石もしくは交流磁石を用います。

・BKG吸収のみを測定する方法 (3)

中空陰極ランプに高電流を流してBKG吸収のみを測定する。

中空陰極ランプに高電流を流すと、ランプ内部で励起された原子が増加し、この増加した原子が共鳴線を強く自己吸収するようになり、原子吸光が起こる中心付近の光が弱く、その周囲が強い、中心部が凹んで周囲がやや広がったスペクトルが現れます。この状態では、バックグラウンド吸収のみが測定可能です。

駅のホームで例えるなら、ドアの位置が異なる列車が到着したと考えます。ホームの乗車位置と列車の乗車口の位置が異なるので、並んでいた乗客(原子)は列車に乗車できません。


【過去問演習】

第72回(2021年12月)

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〔解説〕

1.誤り。規格5.7.1に「連続スペクトル光源補正方式は連続スペクトルを発生する光源(例えば、重水素ランプ、タングステンランプなど)をバックグラウンド補正に用いる方式である。 ~中略~ 補正用光源としては、180〜350 nmの範囲に分析線をもつ元素に対しては重水素ランプが、また、350〜800 nmの範囲の元素に対しては、タングステンランプが最もよく用いられる。」とあります。
つまり、光源の種類を使い分けることによって分析線の範囲は180~800nmの範囲で対応可能です。

2.誤り。この記述は、規格5.4.1にあるダブルビーム方式の説明ですから、バックグラウンド補正ではなく、光の強度のドリフト補正の話になります。

3.正しい。規格5.7.2に「磁場によってゼーマン分裂したスペクトル線をバックグラウンド補正に用いる方式である。」とあります。

4.誤り。わたしが使用している装置はゼーマン補正のダブルビーム方式です。(いまどきシングルビーム方式を採用している装置なんてあるのか?)

5.誤り。常に高電流を流したら、バックグラウンド吸収しか測定されません。規格の3.lに「自己反転補正方式は中空陰極ランプに通常の電流と高電流とを交互に流し、高電流による放電で生じる自己反転したスペクトル線をバックグラウンド補正に用いる光学系の一方式。」とあります。


第70回(2019年12月)

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 〔解説〕

規格の3.1 に「自己反転補正方式は中空陰極ランプに通常の電流と高電流とを交互に流し、高電流による放電で生じる自己反転したスペクトル線をバックグラウンド補正に用いる光学系の一方式。」とありますから、(ア)には「中空陰極ランプ」、(イ)には「高電流」が入ります。これを満たす選択肢は1のみ。

正解は1


第68回(2018年3月)

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〔解説〕

問題文には「試料のミスト及び個体粒子によって散乱されることにより、見かけの吸光度が大きくなる」とあります。

そういえば、バックグラウンドの定義は「目的とする元素の原子蒸気以外を原因とする光の減光現象」のことでしたから、バックグラウンドの対策を取ればよいのです。

バックグラウンドの対策は、①連続スペクトル光源補正方式、②ゼーマン分裂補正方式、③自己反転補正方式の3つでしたので、正解は4になります。


第61回(2011年3月)

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 〔解説〕

1.バックグラウンドの定義そのものですから、この記述内容は正しいです。

2.非共鳴近接線方式は実務において必要のない知識ですので、保留。

3.連続スペクトルを発生する光源として、重水素ランプとタングステンランプは覚えなくてはなりませんが、キセノンランプはマニアックですね。取り扱っているメーカーはアナリティクイエナしか思い浮かばない。正しい記述内容ですが、わからなくてもOK

4.自己反転補正方式の定義そのものですから、この記述内容は正しいです。

5.ゼーマン方式は原子蒸気に磁場をかけるのであって、電場をかけるのではありません。

正解は5

2025年5月9日金曜日

環境計量士と原子吸光分析法(2)

ここでは環境計量士試験対策として、電気加熱原子吸光分析冷蒸気原子吸光分析を扱う。


「電気加熱原子吸光分析」とは?

電気的に加熱制御できる炉の中に、試料溶液を入れ 乾燥→灰化→原子化して原子吸光分析する方法のことを電気加熱原子吸光分析という。

この方法の特徴の1つは高感度であること。フレーム原子吸光分析法やICP発光分析法よりも検出下限が低く、ICP-MSに匹敵するほどの低濃度の測定が可能。

その一方で、元素や試料の種類によって乾燥・灰化・原子化温度が異なり、誤った温度設定及び時間設定をしてしまうと、目的元素の揮発や試料溶液の突沸が起きてしまうといったデメリットもある。


電気加熱炉

電気加熱炉は “ちくわ” の形をした黒鉛製の発熱体(グラファイトチューブ)が一般的で、これに電流を流して加熱する。

※「JIS K 0121 原子吸光分析通則(以下、規格)」には「発熱体は黒鉛製又は耐熱金属製とする」と書いてあるが、実際のところ黒鉛製以外の発熱体は市販されていない。しかし、試験では「耐熱金属製(タングステ, モリブデン)」がたびたび出題されるから要注意だ!

図のように、ちくわ(発熱体)の上部にある小さな穴からマイクロピペットを使用してサンプル(試料溶液)を注入する。

ちくわ(発熱体)に電流を流して、ちくわ内部の試料溶液を乾燥→灰化→原子化する。

内部で原子化された元素は、ランプからの光が通る軸方向に滞留するため、光路中の原子濃度が高くなり、感度が上昇する。

ちくわ(発熱体)内部の酸化防止、測定後の試料蒸気の排出のため、アルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガスをちくわ(発熱体)内部に流す。


「冷蒸気原子吸光分析」とは?

試料溶液を還元気化、または加熱気化して得られた水銀の原子蒸気を原子吸光分析する方法のことを冷蒸気原子吸光分析といい、水銀専用原子吸光分析装置は、この方法で分析を行う。

還元気化は、試料溶液に還元剤を加えて溶液中の水銀イオンを金属水銀(ガス状)に還元し、水銀蒸気を発生させる。

加熱気化は、試料を加熱して気化した水銀を捕集管に捕集し、水銀をその他の測定に悪影響を与えるガスと分離する。分離後、捕集管を加熱して水銀を気化させる。この方法を「加熱気化ー金アマルガムー冷蒸気方式」とよぶ。


【過去問演習】


第75回(2024年12月)

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〔解説〕

1.正しい記述。
規格〔5.3.2 電気加熱方式の原子化部〕には “発熱体は黒鉛製または耐熱金属製とする” と記載されている。

2.正しい記述。
規格〔3.定義 m 〕には “水銀専用原子吸光分析装置は試料中の水銀を還元気化又は加熱気化して発生する水銀蒸気を原子吸光分析する水銀専用の測定装置” と記載されている。

3.正しい記述。
規格の〔5.8 附属装置 d 〕には “水素化物発生装置は試料溶液中の分析対象成分を還元してきた以上の水素化合物とし、フレーム又は加熱吸収セルに導入する装置” と記載されている。

4.正しい記述。
規格の〔5.3.1 フレーム方式の原子化部 a 〕には “予混合バーナーに用いるフレームの種類は、アセチレン・空気、アセチレン・一酸化二窒素、水素・アルゴンなどとする” と記載されている。

5.誤った記述。
規格〔5.3.2 電気加熱方式の原子化部〕には “酸化防止、試料蒸気などの移送のため、アルゴン、窒素、アルゴン及び水素の混合ガスなどを炉の中に流す” と記載されている。

グラファイト炉は酸化によって劣化してしまう。そのため、アルゴンや窒素ガス窒素ガスなどの不活性ガスをチューブ内に一定方向に流す必要がある。

以上より正解は5


第67回(2017年3月)

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 〔解説〕

(ウ)の還元気化原子吸光法は全水銀が分析対象成分なので、選択肢は1と3に絞られる。

そもそも原子吸光分析法は金属成分が分析対象。硫化物イオンは金属ではないから、選択肢の1と5は誤り。

以上より、正解は3


第65回(2015年3月)

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〔解説〕

1.正しい記述。
イオン化干渉に関する知識が問われている。フレーム及び電気加熱炉中で原子がイオン化すると、基底状態の原子が減少する。原子吸光は基底状態の原子による吸光を測定する方法だから、基底状態の原子の減少は吸光度の低下を招く。

一般論として、アルカリ金属はイオン化ポテンシャル(イオン化エネルギー)が低く、陽イオンになりやすい。そして、温度が高いほど原子や分子の熱運動が活発になり、イオン化に必要なエネルギーが供給され、イオン化は促進される。

2.正しい記述。
アルミニウムは難分解性酸化物を生成するため、アセチレン-空気フレームでは感度が低く、定量は困難。したがって、JIS K 0102〔58.2 フレーム原子吸光法 注(5)〕に示すように、多燃料フレームにして還元性を強めたほうが高感度が得られるため、高温フレーム(アセチレンー一酸化二窒素フレーム)を適用する。

3.誤った記述。
還元剤により容易に還元気化できる元素はカルシウムではなく水銀。

4.正しい記述。
規格〔3. 定義 n〕には “加熱気化ー金アマルガムー冷蒸気方式は、試料中の水銀を加熱気化しして原子蒸気とし、水銀捕集管で濃縮後これを加熱し、得られた原子蒸気を原子吸光分析する方式” と記載されている。

5.正しい記述(高度に専門的な知識)。
分析化学便覧には “硫黄の主な共鳴線が180.7nmの真空紫外部にあるため、通常は陽イオンの測定による間接法が用いられる” と記載されている。

※原子吸光で測定可能な波長は、200nm~800nm。
※「陽イオンの測定による間接法」とは、試料中のS化合物を硫酸イオンとし、これに塩化Baを添加して硫酸Baを生成する。これを溶解、原子吸光法にてBaを測定し、間接的にSの濃度を求める方法。

以上より、正解は3


第63回(2013年3月)

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〔解説〕

1.誤り。
「発熱体」と「乾燥過程の温度」は、電気加熱方式。

2.誤り。
「バーナーの種類」は、フレーム方式。

3.誤り。
「助燃ガス」は、フレーム方式。

4.「イオン化過程の時間」というものは存在しないはず...誤りだとは思うが保留。

5.「発熱体の材質」と「灰化過程の温度」は電気加熱方式。
「シースガス」が曲者。シース(sheath)とは(刃物の)鞘、(道具の)覆いといった意味で、原子吸光におけるシースガスとは、試料が原子化される際に炉内部で他のガスや酸素と混合するのを防ぎ、原子化された原子が拡散するのを防ぐ役割を担うらしい。いずれにせよ、電気加熱方式。

正解は5


第59回(2009年3月)

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 〔解説〕

空欄の「ア」には、「原子化」が入るから、選択肢は2と3に絞られる。

空欄の「イ」には、「耐熱金属」が入る。「タングステン」と「アルミニウム」のうち耐熱金属はタングステン。

光学系の測光方式には、シングルビーム方式とダブルビーム方式があるから、空欄の「ウ」にはダブルビームが入る。「自己反転」はバックグラウンド補正方法の1つ。

以上より、正解は「イ」