2019年12月7日土曜日

アンモニアが弱塩基である理由、説明できる?

読めば分かると思うけどさ、 化学分析やってて資格も視野に入れてる人のために、アンモニアが弱塩基な理由を一応まとめてあげるってだけ。 別に感謝とかいらないから。

そもそも塩基って何?

まず基本ね。
1887年にスウェーデンのアレニウスって人が、酸と塩基をこう定義したの。

  • 水に溶けて 水素イオン(H、すなわちプロトン) を出すのが酸
  • 水に溶けて 水酸化物イオン(OH-)を出すのが塩基

水酸化ナトリウムはさ、水に溶けるとちゃんとこうなるでしょ。

NaOH → Na + OH-

でもアンモニアは?
OH⁻なんて最初から持ってないんだから、出しようがないわけ。 だからアレニウスの考え方だけだと、「アンモニアを塩基って呼ぶの、無理じゃない?」って話になるの。


ちなみに昔はね、「アンモニア水では水酸化アンモニウム(NH₄OH)ができて、それが電離する」 とか学校で教えられてたけど、今はその存在が否定されてるから。 現場でこういう古い知識が残ってると混乱するからさ、アップデートはちゃんとしなさいよね。 ……はい、脱線終了。


ブレンステッドの定義で考えると?

アレニウスから30年以上たって、ブレンステッド(とローリー)が、もっと現実的な定義を出したの。

  • H+を与えるのが酸
  • H+を受け取るのが塩基

アンモニアはさ、窒素が非共有電子対を持ってるでしょ。

だから H⁺を受け取りやすい性質があるの。
つまり、H⁺を受け取るアンモニアは塩基になるの。

じゃあそのH⁺、どこから来てるの?

答えは 水(H₂O)。水はH⁺を渡してるから、この反応では酸になるの。

NH₃(aq) + H₂O(l) ⇄ NH₄⁺(aq) + OH⁻(aq)

ま、結果的にOH⁻ができるから、溶液は塩基性になるってわけ。

強い塩基と弱い塩基、何が違うの?

強塩基代表の水酸化ナトリウムは、水に溶けたらほぼ全部電離する。
でもアンモニアは違う。
水に溶けても、せいぜい1%未満しかH⁺を受け取らないの。
だからできるOH⁻の量も、ほんとにちょっと。
つまり、

強塩基が生み出すOH⁻の量 > 弱塩基が生み出すOH⁻の量

これが決定的な違い。


数字でちゃんと比べてみなさい!

アンモニア水は、次の平衡状態になってるの。

NH3(aq) + H2O(l) ⇄ NH4+(aq) + OH-(aq)

で、この反応ね、温度が一定なら、左辺と右辺の濃度の間にはちゃんと決まった関係が成り立つのよ。
その関係を数式で表したときに出てくる定数が、濃度平衡定数 Kcってやつ。

\[ K_C = \frac{[NH_4^+][OH^-]}{[NH_3][H_2O]} = \text{一定} \]

ここで注目してほしいのが、溶媒の水[H₂O]。
水はさ、溶質のNH₃とかNH₄⁺、OH⁻と比べて、物質量が桁違いに多いの。
だから反応が多少進んだところで、水の濃度はほとんど変わらない。
つまり、水の濃度は「一定として扱っていい」ってこと。 (活量を1として無視する、って言い方もするけど……今はそこまで分かってれば十分。)
ここで考え方の整理ね。

「左辺には定数、右辺には変数」

この形にまとめたいから、水[H₂O]は左辺に移動させるの。

\[ K_C・[H_2O] = \frac{[NH_4^+][OH^-]}{[NH_3][H_2O]} = K_b \]

すると、もともとの Kc とはちょっと形の違う、新しい定数が出てくる。
それが、Kb(塩基解離定数)
塩基が強い物質ほど多くのOH-を生み出すから、分子が大きくなる。結果として Kb の値が大きくなる。つまり、

  • Kb が大きい → 塩基が強い
  • Kb が小さい → 塩基が弱い

25℃でのアンモニアとアニリンの値を比べるとこう。

  • アンモニア:Kb = 1.8 × 10-5
  • アニリン:Kb = 4.0 × 10-10

アンモニアのほうが強いけど、それでも10-5
そりゃ弱塩基っていわれるわ。

ちなみに NaOH は強塩基すぎて Kb が「めちゃくちゃ大きい」扱いだから、普通は定義しない。

Kb が小さい理由、熱力学的に教えてあげる。

まずは、いつものこの反応からね。

NH3(aq) + H2O(l) ⇄ NH4+(aq) + OH-(aq)

この反応について、標準ギブス自由エネルギー変化(ΔGo)は +27 kJ/mol。
...+(プラス)。ここ、ちゃんと見逃さないでよ。
一応おさらいしておくと、

  • (ΔGo)< 0:反応は右に進みやすい
  • (ΔGo)= 0:平衡状態
  • (ΔGo)> 0:反応は左に進みやすい

だから、この数値だけ見ると「え?アンモニア、右に進みにくくない?」って思うよね。うん、普通に正しい反応。
次にΔGoと平衡定数 K の関係式。

ΔGo = -RT ln K

これはもう暗記レベルでいいから。理由はあとでちゃんと分かるようになるし。
ここで、温度を25℃(298K)として、(ΔGo)= 27 kJ/mol を代入。

27,000 J/mol ≈ −8.31 J/mol·K × 298 K × ln Kb

今回の反応での平衡定数Kは、塩基解離定数Kbに対応するから、KじゃなくてKbを使う。これを解くと、

Kb ≈ 1.8 × 10⁻⁵

はい、出ました。10⁻⁵
正直、かなり小さい。この Kb がこんなに小さいってことは、この反応がほとんど右に進まないって意味なの。

言い換えると、アンモニアは水中でほんの一部しか NH₄⁺ と OH⁻ にならない。だから「弱塩基」って呼ばれるわけ。
数式で見ても、エネルギー的に見ても、ちゃんと同じ結論にたどりついてるの。感覚の話じゃなくて、数字でちゃんと弱いって分かるでしょ。

「じゃあ、ΔGoが正なのに最初は反応が進むのはなぜ?」って思った?
いいとこ気づくじゃん。

ΔG°は標準状態の話。実際にアンモニアを水に溶かした瞬間は、右側のイオン( NH₄⁺ と OH⁻ )の濃度ほぼゼロだから、ΔGで考えるの。

ΔG=ΔG°+ RT ln Q

ここで出てくる Qは「反応商(はんのうしょう)」って呼ばれるもので、超ざっくり言うと 「今この瞬間の溶液の濃度比」 のこと。
今・このタイミングで、NH₃とかNH₄⁺とかOH⁻がどれくらいあるかを使って計算する値、それがQ。
式の形はこんな感じになるんだけど……

\[ Q = \frac{[NH_4^+][OH^-]}{[NH_3]} \]

で、たぶんここで思うでしょ?
「え?これ、Kbと同じじゃない?」
うん、その感覚、めっちゃ正しい。見た目はほぼ一緒。
でもね、違いはたった一つだけ。

  • Q:まだ平衡に達してない途中段階の濃度比(途中経過)
  • Kb:ちゃんと平衡に達したときの濃度比(ゴール)

この違い、分かってないとΔGの話で一気に迷子になるから、ここ超重要だからね。
……別に脅してるわけじゃないけど。

話を戻すと、水にアンモニアを溶かした瞬間は、NH4+やOH-の濃度はほぼゼロだから、RTlnQは大きなマイナスの値になるの。その結果、全体のΔGは一時的に負(マイナス)になる。
つまり、最初だけ反応は進むの。でもちょっとイオンができたら、すぐ平衡。これがアンモニアが弱塩基な理由。


で、これ実務に必要なの?

「こんなの現場じゃ使わない」って言う人いるけどさ。
作業だけなら、まあ確かにね...
でも、分析業務を“管理する側”になるなら必須だから。
肩書きだけ管理者で、中身スカスカとか――
正直、一番キツいから。
……別に煽ってるわけじゃないけど、ちゃんと分かってる人のほうが、カッコいいでしょ?