2026年7月15日水曜日

環境計量士とイオン電極法(5)|イオン電極の種類


イオン電極法は、環境計量士試験で何度も出題される重要なテーマ。
試験で押さえておくべきポイントに絞って分かりやすく解説していくから。
ついでに、問題演習にもチャレンジしなさい!

試験で押さえておくべきポイントは次の5つ。

🌿 ポイント
  • イオン電極法とは?-測定装置の構成-
  • イオン電極法の測定原理(ネルンスト式)
  • イオンの活量
  • 応答こう配
  • イオン電極の種類 ◀これを解説!

イオン電極の種類

イオン電極は、感応膜の種類によって ①ガラス膜電極、②固体膜電極、③液体膜電極、④隔膜形電極 の4種類に分類されるの。

「え~、4種類も覚えるの?」って思ったでしょ?

...大丈夫。ちゃんと覚えるポイント教えてあげる。
まず、試験で押さえておきたいの次の2つ。

🌿 ポイント
  • 電極の先端(感応膜)はデリケートだから、優しく取り扱うこと。
  • 固体膜電極だけは例外。比較的丈夫なので、1200番程度の研磨紙で研磨できる。

「全部の電極がデリケート」
そう思い込んでると、あとで痛い目みるから。試験では例外が狙われるの。

4つの電極の特徴よ。下線を引いたところは試験でよく狙われるから、しっかり押さえておきなさい。

ガラス電極

ガラス膜電極は、pH(水素イオン)を測定する電極。特殊なガラス膜を使えば、Naイオン電極 として使われることもある。
名前に「ガラス」って付いてるんだから、割れやすいのは当然でしょ。ぶつけたり落としたりしないこと。


固体膜電極

固体膜電極は、難溶性金属塩を主成分とする粉末を加圧成形した感応膜を使った電極。
内部液はいらないし、イオン電極の中では比較的丈夫な部類ね。
表面が汚れたら、1200番程度の研磨紙で軽く研磨すればOK。


固体膜電極(単結晶)

単結晶型の固体膜電極は、フッ化物イオン電極だけ。
感応膜にはフッ化ランタン(LaF₃)の単結晶が使われてる。鏡みたいにツルツルしてるけど、傷が付くと性能が落ちる。 だから、硬いものを当てない。傷を付けない。


液体膜電極

液体膜電極は、液状イオン交換体なんかを有機溶媒に溶かして、高分子物質に含浸させた感応膜を使う電極。
感応膜は柔らかいゲル状だから、指や物で触らないこと。


隔膜型電極(ガス透過膜)

隔膜形電極は、NH₃、NO₂、CO₂みたいな、水に溶けているガスを測定する電極。
先端にはガス透過膜があって、この膜を通ってガスが電極内部に入ってくる。
内部には少量の液と小さなpH電極が入っていて、侵入したガスで内部液のpHが変化する。その変化を測定して、試料中のガス濃度を求める仕組みってわけ。
もちろん、ガス透過膜は薄いから、押したり傷を付けたりしたらアウト。


⭐ 過去問演習(第61回, 問題文を一部編集・再構成)
問1 JIS K 0122に基づくイオン電極法に関する次の記述のうち、誤っているものを一つ選びなさい。

 1価イオンを測定した場合の応答こう配は、2価イオンを測定した場合と比べて、およそ2倍になる。
 全イオン濃度が 1.0×10⁻³ mol/L 以下の希薄な溶液では、活量係数γはほぼ1として扱うことができる。
 隔膜形電極を使用する際は、使用前に感応膜を1200番程度の研磨紙で磨き、その後、水または低濃度の標準液に数時間浸してから測定を行う。
 試料中に測定を妨げるイオンが含まれている場合は、蒸留や錯形成などの前処理を行い、妨害イオンを除去またはマスキングする。
 イオン電極が適切に使用できるpH範囲は、測定対象イオンの濃度が低くなるほど、一般に狭くなる。
解説

1.
応答こう配は「環境計量士とイオン電極法(4)」で解説済み。覚えてる?
「1価イオンなら約60 mV、2価イオンなら約30 mV」だったでしょ。
つまり、1価イオンの応答こう配は2価イオンのほぼ2倍。だから、この記述に誤りはなし。

2.
これも「環境計量士とイオン電極法(3)」で勉強した内容ね。
イオン活量 a とイオン濃度 C の間には、
$$ a = γ\,\ C $$ という関係がある。
さらに、全イオン濃度が 10⁻³ mol/dm³以下の希薄な溶液では、活量係数 γ はほぼ 1 とみなせる。この記述も正しい。

3.
1200番程度の研磨紙で研磨できるのは、固体膜電極だけ。
隔膜形電極は、とても薄くてデリケート。研磨したら、感応膜を傷付けて性能を落とすだけ。こんなことしたら、電極の方が泣くわよ。
だから、これが間違い。

【解答】3


比較電極の構造と内部液の流出

比較電極は、使用中に内部液(塩化カリウム溶液)が液絡部から少しずつ流出して、試料溶液に混ざってしまう。

「塩化物イオンを測定するとき大丈夫なの?」

もちろん、そのままじゃダメ。内部液の塩化物イオンまで混ざっちゃうからね。
そこで使うのが、図のような二重液絡形比較電極。
外筒には硝酸カリウム溶液を入れて、塩化物イオンの混入を防ぐってわけ。


⭐ 過去問演習(第69回, 問題文を一部編集・再構成)
問1 JIS K 0102に規定されているイオン電極法による塩化物イオンの測定について、次の記述のうち誤っているものを一つ選びなさい。

 比較電極には、外部液として硝酸カリウム溶液を用いた二重液絡型の銀-塩化銀電極を使用する。
 試料溶液を入れる測定容器として、ガラス製の容器を使用できる。
 試料には酢酸塩緩衝液を加え、pHを約5に調整するとともに、イオン強度を一定に保つ。
 硫化物イオンなどは塩化物イオン電極の測定に影響を及ぼす妨害イオンである。
 イオン電極法は、イオンクロマトグラフ法と比べて低濃度域の定量に優れている。
解説

1.
比較電極の話、さっきしたよね?覚えてる?
塩化物イオンを測定するときは、比較電極の内部液(塩化カリウム溶液)が液絡部から少しずつ試料溶液へ流れ出してしまう。だから、二重液絡形の比較電極を使って、外筒には硝酸カリウム溶液を入れる必要があるの。
ちなみに、単一液絡形でも二重液絡形でも、比較電極そのものは銀-塩化銀電極なんだから、その点はちゃんと押さえておきなさい。

2.
ガラス製の容器を使用していいんじゃない?ダメな理由ある?

3と4
わかんないから、パス

5.
イオンクロマトグラフ法の具体的な定量下限値までは覚えなくてもいい。
でも、低濃度域ではイオンクロマトグラフ法のほうが有利ってことは押さえておきなさい。

電位差測定では、ネルンストの式に従ってイオン活量の対数に比例した電位差を測定するの。
だから、極微量域では濃度が変化しても電位差の変化はわずかしかない。
さらに、電極電位のドリフトや温度変化、電気的ノイズなども加わるから、信号がノイズに埋もれやすくなるのよ。

つまり、測定原理そのものが低濃度測定には不利ってことね。

【解答】5


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環境計量士とイオン電極法(4)|応答こう配


イオン電極法は、環境計量士試験で何度も出題される重要なテーマ。
試験で押さえておくべきポイントに絞って分かりやすく解説していくから。
ついでに、問題演習にもチャレンジしなさい!

試験で押さえておくべきポイントは次の5つ。

🌿 ポイント
  • イオン電極法とは?-測定装置の構成-
  • イオン電極法の測定原理(ネルンスト式)
  • イオンの活量
  • 応答こう配 ◀これを解説!
  • イオン電極の種類

応答こう配とは?

応答こう配って聞くと難しそうだけど、そんなに身構えなくて大丈夫。
応答こう配は、横軸をイオン濃度(正確には活量)の対数、縦軸を電位とした検量線の傾きのことよ。

...なんて言われても、ピンとこないよね。

だから、とりあえずは「イオン濃度が10倍変化したとき、電位が何mV変化するかを示す値」と考えておけば十分よ。

まずは結論だけ覚えなさい!
これだけ覚えておけば、試験対策は十分なんだから!
🌿 応答こう配の暗記事項
  • 1価の陽イオン=約+60mV
  • 2価の陽イオン=約+30mV
  • 1価の陰イオン=約-60mV
  • 2価の陰イオン=約-30mV
陽イオンなら「+」、陰イオンなら「−」
1価なら約 60 mV、2価なら 約 30 mV
って覚えるのよ。

⭐ 過去問演習(第76回, 問題文を一部編集・再構成)
問1 次の表は、代表的なイオン電極の特徴をまとめたものです。
(ア)~(ウ) に当てはまるイオンの組み合わせとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
 
電極の種類電極の形式 応答こう配  測定可能なpH範囲
(ア)固体膜電極-25~-3013~14
(イ)固体膜電極(単結晶)-50~-605~8
(ウ)液体膜電極+50~+604~8
※応答こう配は25 ℃において、イオン濃度が10倍変化したときの電位変化(mV)の目安を示しています。

 選択肢  (ア)  (イ)  (ウ) 
CN-F-NO3-
Na+Cl-NH4+
CN-S2-Ca2+
S2-Na+NO3-
S2-F-NH4+
解説

「応答こう配」に注目。

応答こう配が陽イオンなら「+」、陰イオンなら「−」だから、
(ア)と(イ)は陰イオン、(ウ)は陽イオンになる。
これを満たす選択肢は

1価なら「約60 mV」、2価なら「約30 mV」だから、
(ア)は2価、(イ)と (ウ)は1価になる。
これを満たす選択肢は

【解答】5


⭐ 過去問演習(第71回, 問題文を一部編集・再構成)
問1 次の表は、代表的なイオン電極の特徴をまとめたものです。
(ア)~(ウ) に当てはまる組み合わせとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
 
電極の種類電極の形式 応答こう配  測定可能なpH範囲
(ア)固体膜電極(単結晶)-50~-605~8
Ca2+液体膜電極(イ)5~8
CN-固体膜電極-50~-60(ウ)
※応答こう配は25 ℃において、イオン濃度が10倍変化したときの電位変化(mV)の目安を示しています。

 選択肢  (ア)  (イ)  (ウ) 
F- +25~+30 11~13
NH4+ -100~-120 11~13
Cl- -100~-120 2~13
NH4+ +25~+30 2~5
F- -100~-120 2~5
解説

まずは(ア)の行の「応答こう配」を見なさい。
「-50~-60 mV」になっているでしょ。これは1価の陰イオンの特徴なんだから、(ア)に入るのはF-もしくはCl-よ。
この時点で、選択肢は1・3・5に絞られるわね。

次は(イ)を確認しなさい。
測定対象イオンはCa2+。2価の陽イオンなんだから、応答こう配は「+25~+30 mV」になるに決まってるでしょ。
これで残った選択肢は1だけ。

基本的なことだけど、シアンを取扱うときは必ずアルカリ性。酸性にすると有毒なシアン化水素が発生するからね。

【解答】1


⭐ 過去問演習(第63回, 問題文を一部編集・再構成)
問3 次の表は、代表的なイオン電極の特徴をまとめたものです。
(ア)~(ウ) に当てはまる組み合わせとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
 
電極の形式電極の種類 応答こう配  測定可能なpH範囲
ガラス膜電極(ア)+50~+606~11
固体膜電極S2-(イ)13~14
固体膜電極CN--50~-60(ウ)
※応答こう配は25 ℃において、イオン濃度が10倍変化したときの電位変化(mV)の目安を示しています。

 選択肢  (ア)  (イ)  (ウ) 
Na+ -25~-30 11~13
Cl- -100~-120 7~11
NH4+ +50~+60 3~7
NH4+ -100~-120 11~13
Ca2+ -25~-30 7~11
解説

まずは(ア)の行の「応答こう配」を見なさい。
「+50~+60 mV」になっているでしょ。これは1価の陽イオンの特徴なんだから、(ア)に入るのはNa+もしくはNH4+よ。
この時点で、選択肢は1・3・4に絞られるわね。

次は(イ)を確認しなさい。
測定対象イオンはS2-。2価の陰イオンなんだから、応答こう配は「-25~-30 mV」になるに決まってるでしょ。
これで残った選択肢は1だけ。

【解答】1


60mVの導き出し方

「60mVを覚えろって言われても、なんで60mVなの?」って思ったでしょ?
その理屈もちゃんと教えてあげる。

まずは、検量線の傾きの求め方を思い出して。
高校1年生の数学で習ったでしょ?

$$傾き=yの増加量÷xの増加量$$

ここで
・「yの増加量」:2種類の標準液の電位の変化量
・「xの増加量」:2種類の標準液の濃度(正確には活量)の対数の変化量
を表してるの。

そして、電位はネルンストの式で求められる。

$$ E = E_0 + \frac{2.303RT}{zF} log_a $$

ここで、温度25℃, 濃度が10ppmと100ppmの1価の陽イオンの電位を計算してみると

10ppmの場合

$$ E_1 = E_0 + 0.059\,\ log 10 = E_0 + 0.059 $$

100ppmの場合

$$ E_2 = E_0 + 0.059\,\ log 100 = E_0 + 0.118 $$

ここで求めたいのは電位そのものじゃなくて、電位の変化量だから2つの式を引き算するの。

$$ E_2 - E_1 = (E_0 + 0.118) - (E_0 + 0.059) = 0.059V $$

ほら、E0が綺麗に消えた。
つまり、yの増加量=0.059Vになるの。


次は「xの増加量」ね。

横軸が濃度そのものではなく、濃度の対数だから

$$ log100 - log10 = log\frac{100}{10} = 1 $$

となるの。

つまり、xの増加量=1


あとは傾きの式に代入するだけ。

$$傾き=yの増加量÷xの増加量$$

だから、傾き(応答こう配)は 0.059V(約60mV)になるの。


2価のとき、30mVになる理由は?

もう一度、ネルンストの式を見て。

$$ E = E_0 + \frac{2.303RT}{zF} log_a $$

1価のイオンでは、分母のzは1だったの。
でも、2価のイオンでは、分母のzは2になるの。

分母が2倍になると、式全体の値は半分になるよね。
だから、1価で約60mVだった応答こう配は、2価ではその半分の約30mVになるの。


これで、応答こう配がネルンストの式から導き出される値だということが分かったでしょ。
試験では「1価なら約60mV、2価なら約30mV」と覚えておけば十分。
でも、その理由まで理解しておけば、忘れてしまっても自分で考え直せるわ。

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