2020年6月28日日曜日

焼却灰に含まれる二酸化ケイ素の分析方法(後編)

中編に引続き、Q&A形式で解説します。

残渣を最初から1000℃で焼かず、いったん炭化させる理由は?

溶液と沪別した残渣は、ろ紙ごと白金ルツボに入れて強熱しますが、はじめから1000℃で強熱しません。ガスバーナーの炎で徐々に加熱していき、ろ紙を炭化させたのち、電気炉で強熱するのがセオリーです。
その理由は2つあります。
  1. 水分が急激に沸騰し、沈殿が飛跳ねることがあります。
  2. ろ紙が炎を出して燃えた場合、炭化したろ紙の一部が沈殿物の中に取り込まれてしまい、長時間強熱しても燃焼しきれずに残ることがあります。
分析は焦らず、確実に進めましょう。


フッ化水素酸処理を行う際、硫酸を必ず共存させる理由は?
硫酸の代わりに硝酸を代用しても大丈夫?

仮に硫酸を添加せずにフッ化水素酸を蒸発乾固させた場合、正確な二酸化ケイ素の定量はできません。また、硫酸の代わりに硝酸を代用した場合も同じです。

詳しく説明しましょう。
たとえば、不純物としてチタンが含まれていた場合、チタンはケイ素と同様にTiF4として揮散してしまうので、正の誤差となります。

また、チタン以外の不純物は1000℃で強熱しても酸化物にならず、フッ化物として残留してしまうため、1回目の秤量で酸化物として秤量された不純物が、2回目の秤量ではフッ化物として秤量されます。
その結果、酸化物とフッ化物の化学式量による誤差が生じ、フッ化水素酸による処理前と処理後の重量の差が何を意味するのか分からなくなってしまいます。



逆に、硫酸の共存下でフッ化水素酸を使用すると、酸化物は硫酸塩へと置き換わり、フッ化として残留しません。また、TiがTiF4として揮散することもなくなります。
そして、すべての硫酸塩は1000℃よりはるか低温で完全に分解し、再び酸化物にもどります。

例 Fe2(SO4)3 → Fe2O3 + 3SO3


さて、硫酸の代わりに硝酸を代用した場合はどうなるでしょうか?
硝酸には硫酸のような効果はありませんから、Ti は確実に TiFとして揮散しますし、チタン以外の不純物はフッ化物として残留します。


分析結果のばらつきはどのくらい?

規格には2回繰り返して行った測定値の差(許容差と言います)として、同一分析所内では0.85%と記載されています。しかし、今回紹介したknow-howを実践すれば、0.20~0.30%は楽勝です。