2024年9月21日土曜日

環境計量士と排ガス試料採取方法(1)

ここでは環境計量士(濃度)試験に毎年出題される「JIS K0095 排ガス試料採取方法」を4つのパートに分け、試験に出題される部分だけをJISから抜粋し、必要に応じて解説を追記しています。
また、過去の試験問題とその解説も掲載していますから、まずは薄緑色のボックスに書かれた内容を2~3回通読したうえで、過去問演習を行ってください。

通読と過去問演習を何度も繰り返して「JIS K0095 排ガス試料採取方法」を得点源にしよう!


1.採取位置と採取口

試料ガスの採取位置には、ダクトの屈曲部分、断面形状の急激に変化する部分などを避け、排ガスの流れが比較的一様に整流され、作業が安全かつ容易な場所を選ぶ。ただし、空気のダクト内への漏れ込みの著しいところ、およびダクト内にダストが堆積したり、落下の著しいところは避ける。(5.1.a)

 "ダクトの屈曲部分や断面形状が急激に変化する部分"ってのは、排ガスが乱れて圧力の変化や渦巻きが生じやすくなるんで、測定対象成分の濃度に偏りが生じたりして、分析結果に悪影響を与えてしまう可能性があるんです。


・採取口は、ダクト内の排ガス流に対してほぼ直角に採取管を挿入できるような角度とする。(5.3.a)

・採取口に用いる管の材質は、炭素鋼、ステンレス鋼又はプラスチック製とする。(5.3.c)

採取管は排ガス流に対して直角に挿入するのか?平行に挿入するのか?という設問が過去に何度が出題されていますから、覚えておきましょう。 

「プラスチックは排ガスの熱に耐えられないから、採取口の材質として使用できない…はず」このように多くの受験生が誤った思い込みをしてしまうけれど、実際は120℃程度の加熱にも耐えられる材質であれば、採取口に用いることが可能です。


第67回(2017.3)
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〔解説〕
採取位置で重要なことは、排ガスが整流されていることでしたね。だから、排ガスが乱れるダクトの屈曲部分や断面形状の急激に変化する部分は避けなければなりません。

以上より、正解は5


2.試料採取装置の構成

まずは規格6.1.1に掲載されている模式図を見てもらいたい。

・化学分析による場合:採取管ー導管ー捕集部

・連続分析による場合:採取管ー導管ー前処理部ー(分岐管)ー計測器

まず大前提として規格には、①試料ガス吸引採取方式と②試料ガス非吸引採取方式が規定されていますが、②は試験に出題されません。

①の試料ガス吸引採取方式は、捕集部で試料ガスを吸引捕集した後に化学分析を行うものと、前処理部にて試料ガス中の水分を除去した後に試料ガスを計測器に導入する連続分析があり、これを模式図にしたものが上の図です。

次に、上の図に登場する用語をもう少し詳しく見ていきます。

化学分析:吸収瓶又は捕集容器に捕集された試料ガスの分析方法のうち、滴定法、吸光光度法、ガスクロマトグラフ法、イオンクロマトグラフ法など連続分析(自動計測器による分析)以外の分析方法の総称のことです。(3.o)

導管:試料ガスを採取するとき、採取管と捕集部又は前処理部とを接続する管のこと。接続には共通球面すり合せ接手管などを用い、グリースは用いない。(3.g, 7.1.1.c)

捕集部:吸収瓶・捕集容器・洗浄瓶・吸引ポンプ・ガスメーターなどから構成されます。(6.8)

前処理部:上でも少し書いたけど、試料ガスを分析計に導入する前に除湿を行う部分。除湿器・気液分離器などから構成されます。(3.i, 6.9)

分岐管:1つの採取管から(複数の計測器を用いて)多成分同時測定するときに用いるもので、それぞれの計測器に接続する導入口をもちます。(6.9.g)


第68回(2018.3)
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〔解説〕
空欄(ア)に「採取管」が入ることは疑いの余地がない。したがって、選択肢の2,3,4は除外され残る選択肢は1と5。
次に空欄(ウ)直後の「各計測器」の「各」に着目。計測器が複数あることが推測できるから、ひとつの採取管から複数の計測器に接続する導入口をもつ「分岐管」が空欄(ウ)に入る。

以上より、正解は1