2024年12月7日土曜日

環境計量士と浮遊粒子状物質自動計測器(1)

JIS B 7954 大気中の浮遊粒子状物質自動計測 

この規格は、大気中の浮遊粒子状物質の濃度を連続で測定する自動計測器の測定原理やその扱い方について、実務者向けに細かく書かれています。しかし、試験に出題される内容はその一部であり、細かな知識が要求されるような出題は減少傾向です。
当ブログでは忙しい受験生に代わって、出題するポイントだけを厳選して紹介します。


浮遊粒子状物質の定義

この規格の3. a)には "浮遊粒子状物質" の定義が記載されています。
しかし、定義そのものは(試験対策として)それほど重要ではありません。重要なのはこれに続く "備考" です。

浮遊粒子状物質とは、大気中に浮遊する粉じん(ダスト、ヒューム、ミストを含む)。

<備考>
環境基本法に基づく大気の汚染に係る環境基準に関する浮遊粒子状物質とは、大気中に浮遊する粒子状物質で、その粒径が10μm以下のものを言います。

太字で示した「粒径10μm以下」が過去に何度か出題されています。
補足しておきますが、固体粒子で粒径が 1 µm 以下の場合をヒューム液体粒子で 10 µm以下のものをミストとよびます。つまり、粒子状物質は個体粒子と液体粒子の両方を含んでいることを頭の片隅に入れておくと良いでしょう。


質量濃度の単位

規格の3.c)に、浮遊粒子状物質の質量濃度を表す単位が定義されています。
単位だけでなく「質量濃度」という用語にも今後注意を払ってください。

質量濃度とは、単位体積の大気中に含まれる浮遊粒子状物質の質量で、単位は μg/m3 で表します。



過去問演習(第71回2020年12月)


<解説・解答>

選択肢1の記述は、規格の3. a)の "備考" がそのまま書かれているようです。でも「粒径が1μm以下」という記述は間違いで、正しくは「粒径が10μm以下」。
したがって、正解は1


過去問演習(第67回2017年3月)


<解説・解答>

選択肢1の記述は、規格の3. a)の "備考" がそのまま書かれています。でも「粒径が1mm以下」という記述は間違いで、正しくは「粒径が10μm以下」。
したがって、正解は1


過去問演習(第59回2011年3月)


<解説・解答>

選択肢1の記述、おかしくないですか?
主語がありません。
文章の意味が分からないので正誤判定できません。
したがって、選択肢1は "保留" とします。

選択肢2の記述は、規格の3. a)の "備考" がそのまま書かれていて、粒径も「10μm以下」で間違いありません。

選択肢3の記述は、規格の3.c)の内容ですが、単位は「ppm」ではありません。正しくは「μg/m3」です。

したがって、正解は3


過去問演習(第62回2013年3月)
※難問です。時間に余裕があったらチャレンジしてみてください。


<解説・解答>

選択肢1から順番に見ていきます。
「浮遊粒子状物質とは、大気中に浮遊する粉塵(ダスト、ヒューム、ミストを含む)」と規格の3. a)に記載されていました。また、固体粒子で粒径が 1 µm 以下の場合をヒューム、液体粒子で 10 µm 以下のものをミストとよびます。つまり、浮遊粒子状物質には個体粒子も液体粒子も含まれることになりますから、「固体粒子状物質である」という記述は誤りです。

選択肢2
計測の対象となる浮遊粒子状物質の粒径は10μm以下ですから、粒径10μm以上の粒子を除く分粒装置が必要となります。しかし、計測器によっては分粒装置を必要としないものもありますから、「いずれの測定方式においても、分粒装置を用いなければならない」という記述は誤りです。

選択肢3
規格の3. e)には「浮遊粒子状物質の粒径は幾何学的又は物理学的性質に基づいて定められる」とありますから、ここの記述は誤りです。

選択肢4
規格の附随書2 2.2.1には「計測器の校正及び試験に用いる校正用空気は、粒径範囲0.1〜3μmの均一系単分散粒子を含むもの」とありますから、ここの記述は誤りです。

以上より、正解は消去法で5