しっかり、ついてきなさい!
計算方法が掲載されている主なJIS規格よ。
- JIS K 2279
「原油及び石油製品-発熱量試験方法及び計算方法」 - JIS M 8814
「石炭類及びコークス類-ボンブ熱量計による総発熱量の測定方法及び真発熱量の計算方法」 - JIS Z 7302
「固形化燃料の発熱量試験方法」
JISには計算式そのものが載っているけれど、「なぜこの式になるの?」「206や23.0ってどこから出てきたの?」なんて説明まで書かれていない。
だから初めて読むと、式を眺めるだけで頭の中が「?」だらけになる人も多いはず。
でも大丈夫。
この記事を読み終える頃には、206と23.0が表している意味やJISの計算式がどういう考え方で組み立てられているのかがきちんと理解できるようになっているから。
水の凝縮熱(23.05の求め方)
真発熱量は、総発熱量から水蒸気の凝縮熱を差し引いた熱量よ。
ここでいう「水蒸気の凝縮熱」とは、水蒸気が水に戻るときに放出される熱エネルギーのこと。
反対に、水が水蒸気になるときは、同じだけの熱エネルギーが必要になる。この熱エネルギーを気化熱(蒸発熱)というの。
つまり、凝縮熱=気化熱(蒸発熱)というわけ。
では、その熱量はいったいどれくらいなのか?
25 ℃の水1molが水蒸気になるために必要な熱エネルギーは41.53 kJ。
JISでは、この値を使って真発熱量を計算しているの。(規格のE.3.2に記載)
これを水のモル質量(18.015 g/mol)で割ると、水1g当たりの熱量は
になる。
でも、JISの計算式に出てくるのは2305じゃなくて23.05よね。
「なんで急に100分の1になるの?」って思ったでしょ?
それは、水分含有量が質量百分率(%)で表されるから。
つまり、水1% は試料1gに水が 0.01g 含まれていることを意味する。
だから、水 0.01g 当たりの熱量に換算すると
となるの。
発熱量の単位は J/g だから、試料1g当たりの熱量を表している。
一方、水分含有量は質量百分率(%)で表すから、試料1gを基準にすると水分1%=水 0.01g になるの。
だから、JISでは水1%当たりの凝縮熱として扱えるように、23.05J という値を使っているのよ。
水素由来の水の凝縮熱(206の求め方)
石炭などの燃料を燃焼すると発生する水蒸気には、次の2種類がある。
- 燃料に含まれる水素と空気中の酸素が反応して生成した水
- 燃料にもともと含まれていた水分が蒸発したもの。
さっきは、燃料にもともと含まれていた水分由来の凝縮熱として23.05を求めた。
でも、それだけじゃ不十分よ。
燃焼によって新たに生成した水も考えないといけないから、水素1g当たりの水の蒸発熱も求めておく必要があるというわけ。
水素と酸素の反応式を見てみなさい。
この反応から分かるように、水素1mol(2.016g)が燃焼すると、水1mol(18.015g)が生成されるの。
つまり、水素1gから生成される水の質量は
となる。
この8.9360倍という値を使えば、水素1g当たりの水の蒸発熱は、
と求められるの。
水素含有量も質量百分率 (%) で表すから、水素1%は試料1g中に水素0.01g含まれていることを意味する。
だから、水素1% (0.01g)当たりの熱量に換算すると
となるの。
JISでは、この値を四捨五入して206として計算式に用いているのよ。
真発熱量(無水)を求める
次は、この2つをどう組み合わせて真発熱量を求めるのか説明するから、ちゃんとついてきなさい。
いきなり水分を含む試料で考えると複雑になるから、まずは水分をまったく含まない試料(無水試料)で考える。
この場合、試料にもともと含まれていた水分はないから、発生する水蒸気は燃焼によって水素から生成されたものだけになる。
つまり、差し引く必要がある凝縮熱は水素由来だけだから、真発熱量は次のように計算式できる。
(例題)
水素含有量が 5.0% だから、水素由来の凝縮熱は
206×5.0 = 1030 J/g
となる。
したがって、真発熱量は
30000-1030 = 28970 J/g
真発熱量(水分補正あり)を求める
こんどは、水分を含む試料の計算式を組み立ていく。
まずは、さっき求めた真発熱量(無水)に水分補正係数を掛ける。
「水分補正係数って何?」
そう思った人もいるかもしれないけど、難しい話じゃない。
例えば、スーパーで100円の商品に『5%引き‼』シールが貼られていたら、
100円×0.95 = 95円
と計算するでしょ?
水分補正も考え方はまったく同じ。
例えば、水分含有量が 5% なら、試料のうち 5% は水分ということになるから、燃料として発熱する部分は残りの 95%
だから、真発熱量(無水)に0.95を掛ければ良いというわけ。
ここまで計算すると、水分を含む試料の発熱量は求められる。
でも、まだ終わりじゃない。
この値には、試料にもともと含まれていた水分由来の水蒸気が、凝縮するときに放出するエネルギーが反映されていない。だから最後に、水分由来の水蒸気の凝縮熱を差し引く。
※ 23.0は水 1%(水 0.01g 当たり)当たりの蒸発エネルギーだったね。
これで、水分を含む試料の真発熱量が求められる。
(例題)
総発熱量が 30000 J/g、水素含有量が 5.0%、水分含有量が 10% のコークスについて、真発熱量を求めなさい。まず、水素含有量が 5.0% だから、水素由来の凝縮熱は
206×5.0 = 1030 J/g
だから、真発熱量(無水)は
30000-1030 = 28970 J/g
次に水分補正値 0.90を掛ける。
28970×0.90 = 26073 J/g
最後に、試料にもともと含まれていた水分由来の水蒸気凝縮熱を差し引く。
26073-23×10 = 25843 J/g
これが、水分含有量10%のコークスの真発熱量。
最初は暗号のように見えたJISの式も、今なら理解できるでしょ?
JISの式は一見複雑そうに見えるけど、やっていることは意外と単純なのよ。
📖関連記事