2020年1月18日土曜日

真発熱量の計算方法が異なる理由

今回は「JIS Z7302-2(1999)廃棄物固形化燃料− 第2部:発熱量試験方法」と、前回お話した「JIS M8814(2003)石炭類及びコークス類ーボンブ燃料計による総発熱量の測定方法及び真発熱量の計算方法」の計算方法が異なる理由を見ていきます。

どちらも固形燃料を対象とした発熱量の試験方法ですが、真発熱量の計算方法が異なります。
いったいどこが異なるのか?
2つの計算方法を比較してみましょう。
JIS M8814(2003)
真発熱量=総発熱量ー206×水素

JIS Z7302-2(1999)
真発熱量=総発熱量ー[2512×(9×水素+水分)/100]
※ここでは話を複雑にしたくないので、試料は全く水分を含んでいないと仮定します。ですから、JIS Z7302-2の水分は0になります。

上の式にある係数206は、水素1%当たり(水8.9360%当たり)の水の蒸発エネルギーです。これについては前回解説しました。

下の式にある係数2512は、水1g当たり(水素 0.1119g当たり)の蒸発エネルギーです。ですから、係数9は水素を水に換算する役割を果たしています。

ここで勘の鋭い人は気づくかもしれません。

前回の解説では、水1g当たりの蒸発エネルギーは2305 J/g でした。今回の2512 J/gとは何が異なるのでしょうか?

それは温度です。

JIS M8814(2003)には次のように記載されています。
1.適用範囲
この規格は、(途中省略)基準温度を25℃とする固体鉱物燃料の総発熱量を決定する方法を規定する。

付随書 E3.1
定容真発熱量25℃における水の蒸発エネルギーは、41.53 KJ/molである。
※41.53 KJ/mol から2305 J/g を導く計算方法は前回紹介しました。

一方、JIS Z7302-2(1999)の基準温度はどうでしょうか。

なんと!温度の記載がありません!

実は、JIS Z7302-2(1999)は引用規格なので、引用元の規格に温度が記載されているはずです。その引用元の規格とは、JIS M8814(1993)であり、これは前回見てきたJIS M8814(2003)の改定前の規格です。

JIS M8814(1993)には次のように記載されています。
3.要旨
この方法は、(途中省略)試料1gに対するJ(20℃)数を求め、発熱量を測定する方法である。

つまり、2512 J/g は20℃における水1g当たりの蒸発エネルギーだったのです。


どうして、JIS M8814は基準温度を20℃から25℃へ変えてしまったのでしょうか?

これについては、JIS M8814(2003)の解説に細かく記載されていますが、簡単に申し上げるとISO1928(1995)を全面的に導入したからです。そして導入したISO1928の基準温度は25℃です。

現在、ISOの導入により真発熱量の計算方法に若干の係数の差異が生じ、2種類の計算方法が存在している状態です。しかし、これまで見てきたように総発熱量と水素と水分が分かれば、真発熱量はどちらの計算方法でも簡単に求めることができます。  


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