2024年12月11日水曜日

環境計量士と浮遊粒子状物質自動計測器(2)

ベータ線吸収方式

JIS B 7954には4つの測定原理(附随書を入れると5つ)が記載されていて、そのうちの1つがベータ線吸収方式です。
この測定方法は、ろ紙上に捕集した粒子に放射線の1つであるベータ線を照射したとき、その粒子の質量に比例してベータ線が吸収される原理を利用しています。
簡単な図で解説しましょう。

大気導入部で取り込まれた試料(大気)中の浮遊粒子状物質は、分粒装置内で目的に応じた粒径に分粒されたのちフィルタ(ろ紙)で捕集されます。これにベータ線を照射してフィルタを通過したベータ線の強度を検出器で測定し、質量濃度を得るといった仕組みになっています。

浮遊粒子状物質を捕集するろ紙はリールに巻かれたテープ状で、これを一定時間ごとに一定の方向に一定の長さだけ移動させ、測定が終了すると巻き取って着脱ができる構造になっていて、ろ紙供給機構とよんだりします。

ろ紙上に捕集した粒子に照射するベータ線の線源は、放射性物質が漏れないように密封されていて、放射線障害防止法に規定された “放射性同位元素” には該当しない14Cや147Pmなどの低いエネルギーのものが使用されています。

フィルタ(ろ紙)を通過したベータ線の強度を測定する検出器は、シンチレーション検出器半導体検出器などが使用されています。

大気の採取流量の変化は測定誤差の原因となるため、ろ紙に粉塵が付着して通気抵抗が増しても規定の流量が維持できる流量制御システムが求められます。


第70回(2019.12)

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〔解説〕

(ア)ろ紙上に捕集した粒子がベータ線を吸収し、その吸収量は質量に比例して「増加」します。したがって、選択肢の2と4は誤りです。

(イ)ベータ線の吸収量の増加から浮遊粒子状物質の質量濃度を求めるので、空欄には「質量」が入ります。したがって、選択肢の1と2は誤りです。

(ウ)ベータ線の検出器は、シンチレーション検出器もしくは半導体検出器です。「周波数」は関係ありません。したがって、選択肢の1と2と3が誤りです。

正解は5


第68回(2018.3)

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 〔解説〕

1.規格の5.2.1 a) に『必要に応じて分粒装置を付加する』とあります。

2.「浮遊状態の粒子にベータ線を照射」とありますが、正しくは「ろ紙上に捕集した粒子にベータ線を照射」です。

正解は2


第64回(2014.3)

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 〔解説〕

ベータ線吸収方式では、ベータ線源として14Cや147Pmなどの低いエネルギーのベータ線を捕集した粒子に照射します。したがって、光源は使用しません。

正解は3


第61回(2012.3)

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〔解説〕

1.規格 5.2.1 d)によると「ベータ線源は密封線源で、14C, 147Pmなどの低いエネルギーのものを使用する。これらの線源の放射能は、放射線障害防止法に規定された “放射性同位元素” には該当しない。」とありますから、ここの記述は誤りです。

2.規格 注1)によると、「ろ紙はJIS K 0901に規定する捕集率A1のものを用いる」とあり、 K 0901ではろ紙の形状、寸法、材質、性能(捕集率、圧力損失、吸湿率、加圧強度、金属含有量)を規定しています。ベータ線の吸収については規定がないので、ここの記述は誤りです。

3.環境基本法に基づく大気の汚染に係る環境基準に関する浮遊粒子状物質は、大気中に浮遊する粒子状物質で、その粒径が10μm以下のものと定義されています。したがって、粒径が10μm以上のものを除外する分粒装置が必要になりますから、ここの記述は誤りです。

4.ベータ線吸収方式では、検出器としてシンチレーション検出器もしくは半導体検出器を使用します。したがって、記述内容に誤りはありません。

5.規格 3. c) には「質量濃度(単位体積の空気中の浮遊粒子状物質の質量)の単位はμg/m3で表す」とありますから、「μg/L」は誤りです。

正解は4


第61回(2011.3)

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 〔解説〕

1.ベータ線吸収方式では、検出器としてシンチレーション検出器もしくは半導体検出器を使用します。したがって、記述内容に誤りはありません。

2.環境基本法に基づく大気の汚染に係る環境基準に関する浮遊粒子状物質は、大気中に浮遊する粒子状物質で、その粒径が10μm以下のものと定義されています。したがって、粒径が10μm以上のものを除外するために分粒装置が用いられています。したがって、ここの記述内容に誤りはありません。

3.ベータ線吸収方式は、ろ紙上に捕集した粒子によるベータ線の吸収量が増加することを利用した測定方法です。記述にあるように「浮遊状態のまま粒子の濃度を求める」ことはできません。

正解は3