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2024年4月14日日曜日

環境計量士とイオン電極法(3)

イオン電極の種類

イオン電極には感応膜の種類によって①ガラス膜電極,②固体膜電極,③液体膜電極,④隔膜形電極に分類されます。
出題例は極めて少ないですが、①と②の電極の取扱い方法が過去に出題されています。③と④は実務でも使用することは稀ですし、試験に出題される可能性も低いのでスルーしても良いと思います。

<ガラス膜電極>
pH計で使用されている電極です。pH(水素イオン)以外にNaイオンの電極としても使用されます。ガラス膜は破損しやすいので衝撃を与えないように取扱います。

<固体膜電極>
難溶性金属塩を主成分とする粉末を加圧成型した膜であり、内部液を必要としません。また、イオン電極の中では比較的丈夫であり、1200番程度の研磨紙で研磨が可能です。
私の知る限り、過去に2回出題されています。

<固体膜電極(単結晶)>
単結晶の固体膜電極はフッ化物イオン電極のみです。この電極は難溶性金属塩であるフッ化ランタンの単結晶からできた鏡のような表面の硬い膜ですが、傷がつくと特性が劣化するので固いものを当てないようにします。

<液体膜電極>
液状イオン交換体などを有機溶媒に溶かし、これを高分子物質に含浸させて感応膜としたイオン電極です。感応膜は柔らかいゲル状なので、指や物で触れないようにします。

<隔膜形電極(ガス透過膜)>
NH3やNO2, CO2といった溶液中に溶解しているガスを測定するもので、電極先端に多孔性の隔膜があり、この孔を通って液中のガスが電極内部に侵入します。電極内部に少量の液があり、侵入ガスがこの液中に溶解して液のpHが変化するので、このpHの変化を電極内部の小型のpH電極で検出し試料溶液中の溶解ガス濃度を測定します。ガス透過膜は薄膜なので、指や物を押し付けたり傷つけたりしないようにします。


第61回(平成23年)環濃

 〔解説〕

1.応答こう配は「環境計量士とイオン電極法(2)」で既に解説したように「1価なら60mV、2価なら30mV」ですから、ほぼ2倍で間違いありません。

2.「環境計量士とイオン電極法(1)」で既に解説したように、イオンの活量(a)と濃度(C)の間には、活量係数γとして aγ = C の関係があります。
また、一般に全イオン濃度が10-3 mol/dm3以下の低濃度溶液においては、イオン活量(a)とイオン濃度(C)はほぼ等しいと考えますから、活量係数γはほぼ1に等しくなります。したがって、ここの記述に誤りはありません。

3.隔膜電極(ガス透過膜)は薄膜なので、指や物を押し付けたり傷つけたりしないようにします。研磨紙(1200番程度)で研磨できるのは固体膜電極のみであり、隔膜電極を研磨紙で研磨できません。

〔解答〕3


比較電極の構造と内部液の流出

比較電極は使用中に内部液(塩化カリウム溶液)が液絡部から少しずつ流出して試料溶液に混入するので、塩化物イオンを測定する際は塩化カリウム溶液以外の内部液を使用することになります。
この場合、図のような二重液絡形の比較電極を使用し、外筒には硝酸カリウム溶液を用います。


感応膜の溶出と測定下限

イオン電極の感応膜はきわめて難溶性の塩類でできていますが、電極を試料溶液に浸漬したときわずかに試料溶液中に溶けだします。そのため電極の種類によって異なりますが、イオン電極法による測定下限は 数mg~0.01mg/Lです。


第69回(平成30年12月)環濃

 〔解説〕

なかなかの難問です。

1.塩化物イオンを測定する際は内部液である塩化カリウム溶液が液絡部から試料溶液に流出してしまうので、二重液絡形の比較電極を使用し、外筒には硝酸カリウム溶液を使用します。電極は単一液絡形、二重液絡形どちらも「銀-塩化銀電極」で間違いありません。

2.ガラス製の測定容器がダメな理由が思いつきませんから、ここの記述は正しいはずです。

3と4は分からないからパス~

5.イオン電極法とイオンクロマトグラフ法の具体的な定量下限値は知りませんが、電極の感応膜からわずかに溶出することを考えると、イオンクロマトグラフ法のほうが低濃度域の定量に適用するはずです。
したがって、ここの記述は誤りでしょう。

 〔解答〕 5