高校化学の知識と思考力があればできる問題です。前回(第71回)の問7で出題された問題とよく似ていますね。
0.02mol/Lの金属イオンMの水溶液と、0.04mol/Lの錯形成剤Lの水溶液を同体積ずつ混合したとき何が起きるのか?表にまとめてみました。
M | + | L | → | ML | |
---|---|---|---|---|---|
反応前 | 0.02V (mol) | 0.04V (mol) | 0 (mol) | ||
反応量 | -0.02V (mol) | -0.02V (mol) | +0.02V (mol) | ||
反応後 | 0 (mol) | 0.02V (mol) | 0.02V (mol) |
問題文に体積についての記述がないから、金属イオンMの水溶液と錯形成剤Lの水溶液の体積をそれぞれ V (L) とすると...
- 反応前の金属イオンMの物質量は… 0.02 (mol/L) × V (L) より 0.02V mol
- 反応前の錯形成剤Lの物質量は… 0.04 (mol/L) × V (L) より 0.04V mol
金属イオンMと錯形成剤Lがそれぞれ 0.02V (mol) 反応し、0.02V (mol) の錯体MLが生成しました。
つまり、錯体MLの生成に金属イオンMと錯形成剤Lがそれぞれ 0.02V (mol)消費されたことになるので、錯体ML生成後の溶液には錯形成剤Lが 0.02V (mol) 残りますが、金属イオンMは残らないはずです。
だから、正解は 0 mol/L だ!
......
......
おかしいですね...
選択肢に 0 mol/L がありません...
実は、錯体MLの一部は水溶液中で平衡状態になりますから、水溶液中には微量の金属Mが存在します。(問題文をもう一度よ~く読んでみてください。”混合後の平衡に達した水溶液中で~” と書いてあるでしょう。)
以上を踏まえ、錯体MLが生成してから混合溶液中で何が起きているのか?表にまとめてみました。
ML | ⇄ | M | + | L | |
---|---|---|---|---|---|
平衡前 | 0.01 (mol/L) | 0 (mol/L) | 0.01 (mol/L) | ||
変化量 | -S (mol/L) | +S (mol/L) | +S (mol/L) | ||
平衡時 | 0.01-S (mol/L) | S (mol/L) | 0.01+S (mol/L) |
金属イオンMと錯形成剤Lの体積がそれぞれ V (L)だから、混合液の体積は 2V (L) になります。したがって...
- 錯体ML平衡前の錯体MLの濃度は… 0.02V (mol) / 2V (L) より 0.01 (mol/L)
- 錯体ML平衡前の錯形成剤Lの濃度は… 0.02V (mol) / 2V (L) より 0.01 (mol/L)
平衡状態になる錯体MLの濃度を S mol/L とすると、金属イオンMと錯形成剤Lの濃度はそれぞれ S mol/L になります。
したがって、S mol/L の錯体MLが平衡状態となった溶液には S mol/L の金属イオンMと0.01+S mol/L の錯形成剤L、そして 0.01-S mol/L の錯体MLが存在します。
ところで、どのようにして金属イオンMの濃度 (S mol/L) を求めましょうか?
問題文を見てみると ” 錯体MLの安定度定数を K = [ML] / ([M][L]) = 1×1010 (mol/L) とし~ ” とあるので、この式を利用します。
この2次方程式を頑張って計算しても良いのだけれど、少し楽をしませんか?
我々が今、計算して得ようとしているのは S の値です。
そして、この値は金属イオンMの濃度であり、その濃度は選択肢に示された数値のいずれかになります。
たとえば、選択肢1の 1×10-2 を式に代入すると分子がゼロになってしまうから方程式が成立しません。
すなわち、Sの値は 1 × 10-5 > S > 1 × 10-12 の範囲内にあり、これはとても小さな数値です。
そこで一旦 S = 0 と考えてみることにします。
すると、0.01+S = 0.01, 0.01-S = 0.01 となりますから、計算式は次のように単純化されます。
K (安定度定数) = 0.01S × 0.01 = 1×1010
0.01S0.01 = 1×10-10
S = 1 × 10-10
正解は4