2022年7月24日日曜日

第72回(2021.12)環境計量に関する基礎知識(化学)問13

📁第72回(2021.12)

ベンゼンの置換反応に関する設問です。高校化学の知識と思考力で大丈夫でしょう!

ベンゼンの炭素間の不飽和結合( π結合)は安定しているので、この結合を破壊するような反応はなかなか起こせません。
しかし、これを破壊しない反応、つまり水素を別の元素に置き換える置換反応は起こりやすいという特徴があります。

たとえば、高校で学習する有名なベンゼンの置換反応の1つにニトロ化があります。
これは、濃硝酸と濃硫酸の混合液にベンゼンを少量ずつ加え、60℃で加熱すると下の図のようにベンゼンのH+が電子を求めるNO2+(求電子試薬)に置換される反応です。


設問は ”ベンゼンよりもニトロ化反応が進行しやすいものを選べ!” ということでしたね。
私の手元にある大学受験用の参考書には次のような記載があります。

トルエンはベンゼンよりも置換されやすく、オルト・パラの位置が特に置換されやすい。

以上より正解は


<それ以外の選択肢がダメな理由>

NO2+は求電子試薬といって、ベンゼンの電子を吸引する性質があります。これ以外にも -COOH、ハロゲン、-CN、-COH などにも同様の性質があります。
その一方で、アルキル基や非共有電子対をもつ原子はベンゼンに電子を供与する性質がありますから、これらがベンゼンに付いているとNO2+のような求電子試薬はベンゼンと置換しやすくなります。


以上を踏まえて選択肢を見てみましょう。

選択肢の安息香酸はベンゼンに -COOH が付いていますから、置換しにくい。
選択肢のクロロベンゼンはベンゼンにハロゲンが付いていますから、置換しにくい。
選択肢のベンゾニトリルはベンゼンに -CN が付いていますから、置換しにくい。
選択肢のベンズアルデヒドはベンゼンに -COH が付いていますから、置換しにくい。