2020年5月4日月曜日

第69回環境計量士国家試験(環濃)問6の解説

問6(第69回 環濃)
JIS K0093に規定されている PCB の試験方法に関する穴埋め問題です。

問題文は JIS K0093 の『5. ガスクロマトグラフ法』の原文のままですが、JIS の原文を丸暗記する必要はありません。いくつかの基礎知識があれば攻略可能です。

(ア)
ヘキサンで抽出できるものとは?
ヘキサンは極性の低い溶媒ですから、ヘキサンで抽出できるものは同じく極性の低い物質に限られます。油脂や長い炭素鎖をもつ有機物などがそれです。これらは PCB と共にヘキサンで抽出されますが、測定時に妨害成分となるので分離する必要があります。

油脂とアルカリ
高校で学習する内容になりますが、油脂とはグリセリン1分子に高級脂肪酸3分子が結合した3価のエステルのことです。
エステルである油脂を水酸化ナトリウムのようなアルカリと共に加熱すると、エステル結合が加水分解されてグリセリンと脂肪酸のナトリウム塩(いわゆる石鹸)が得られます。

グリセリンも石鹸も水溶性ですから、再びヘキサンで抽出を行うと PCB から分離されます。
ところで、PCB はアルカリで分解されないのでしょうか?
PCB は化学的に安定であることが特徴ですから、この程度では分解されません。

したがって、空欄の(ア)には『アルカリ分解』が入ります。


(イ)
私は有機分析については素人なのでこのあたりのことはよく分かりませんが、PCB の分析におけるクリーンアップはシリカゲルを用いたカラムクロマト分離を行うのが一般的なようです。
しかし、試料中に油分(動植物油脂類)などが多く含まれ、アルカリ分解を行っても油分などが分解されずにヘキサン層に残留する場合には、フロリジルを用いたカラムクロマト分離を行う旨が規格の備考に記載されています。

したがって、空欄の(イ)には『シリカゲル』が入ります。


(ウ)
PCB は塩素(ハロゲン)を保有しているので、ハロゲンに対してのみ反応する電子捕獲検出器(ECD)を使用します。

正解は