2020年4月6日月曜日

環境計量士のための Point 解説 ジルコニア式酸素濃度計の話

ジルコニウムの酸化物であるジルコニア(特に酸化イットリウムなどを添加した安定ジルコニア)は、500℃くらいの高温になると酸素イオンに対してのみ導電性を示します。
この性質を利用した酸素濃度計をジルコニア式酸素濃度計とよびます。


ジルコニア式酸素濃度計の原理
たとえば、下の図のようなジルコニアに仕切られた部屋があるとします。
左側の部屋は満員電車のごとく酸素がギュウギュウに詰まっていますが、右側の部屋はスペースに余裕があります。

そこで左の部屋から右の部屋へ亡命を希望する(平衡になろうとする)酸素がジルコニアまでやって来ますが、ジルコニアは通してくれません。
ジルコニアの言い分はこうです。

「酸素イオン以外は通さない!」

そこで、ジルコニアの両面に白金を取り付けて、2つの白金を電圧計を介して導線で結びます。

亡命を希望する酸素がその白金に触れたその瞬間、次の反応が起きます。

O2 + 4e- → 2O2-(還元反応)

なんと!酸素が酸素イオンに還元されたのです。
無事にジルコニアを通過した酸素イオンが再び白金に触れた瞬間、こんどは酸化反応が起きます。

2O2- → O2 + 4e-(酸化反応)

つまり酸素の濃度が高いと還元反応が起こり、逆に酸素の濃度が低いと酸化反応が起きているわけです。

このとき、左右の電極間には酸素濃度の差による起電力(電位の差)が発生します。そして濃度と起電力との間には関係があり、その関係式のことをネルンストの式と言います。


たとえば、左側の白金電極を直接大気に接触させ、大気中の酸素分圧に相当する一定の酸素濃度に保ちます。すなわち、大気中の酸素を基準ガスとするのです。
すると、もう一方(右側)の白金電極に接する被測定ガス中の酸素濃度をこのネルンストの式から求めることができるのです。


ここまで説明してきた内容が 1:40 ~ 2:40 の間にまとめられています。動画でみるとより理解が深まりますよ。「設定」で日本語字幕が付けられます。


校正
左右両方の部屋の酸素濃度が同じとき、ネルンストの式より起電力はゼロになります。左右両方の部屋に大気を入れれば、大気中の酸素濃度は20.6%ですから、そのときの電圧はゼロになります。

また一方を大気、もう一方を酸素濃度が既知の校正用ガスを用いて左右の酸素濃度に差を設ければ起電力が発生します。すると、 y 軸を起電力 x 軸を酸素濃度とした右肩下がりの検量線が引けます。


短所
測定ガス中に CO や CH4 などの可燃ガスが含まれていると測定誤差となります。これはジルコニアの表面でガスが燃焼し、酸素濃度が大きく減少するためです。
また、ジルコニアを腐食させる SO2 などのガスが含まれている場合、測定できません。


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