2020年4月3日金曜日

平成30年(12月)環境計量士(濃度関係)国家試験問題の解説

問9(第69回 環濃)

はじめに、ICP発光分光分析装置の仕組みを簡単に紹介します。

①試料溶液をネブライザーでミスト化し ICP へ導入する。
②ICPで試料中の金属元素を励起発光させる。
③発光した光を分光器でスペクトルに分ける(分光する)。
④選別された元素固有の発光スペクトル線を計測する。

④について
分光器で選別された元素固有の発光スペクトルは、光電子増倍管もしくは半導体検出器で検出します。

※光電子増倍管は測定対象とする元素のスペクトル線を1本ずつ検出する装置(シーケンシャルタイプ)に搭載されています。
※半導体検出器は複数のスペクトル線を同時に検出する装置(マルチチャンネルタイプ)に搭載されています。


次に(フレーム)原子吸光分析装置の仕組みを見てみましょう。

①試料溶液をネブライザーでミスト化しフレームに導入する。
②フレームで原子化した元素に特定の波長をもった光を光源から照射する。
③照射した光の透過光を分光器で必要な分析線だけを選び出す。
④選び出された分析線を計測する。

④について
分光器で選別された分析線は光電子増倍管もしくは半導体検出器で検出します。


さて、設問に示された語句を見てみます。
「ネブライザー」、「半導体検出器」、「分光器」は太字で示したとおり、原子吸光分析装置とICP発光分光分析装置に共通の構成要素です。

「ゼーマン分裂補正方式バックグラウンド補正部」は原子吸光分析法におけるバックグラウンド補正方法の1つですから、ICP発光分光分析装置の構成要素ではありません。

ちなみに、バックグラウンドとその補正方法については、(株)日立ハイテクサイエンスのホームページが参考になると思います。



最後は「水素化物発生装置」です。
たとえば、ヒ素を原子吸光分析装置で測定する場合、その吸収線は真空紫外領域に近くなり、アセチレン空気フレームではバックグラウンドが高いため、ヒ素の感度が得られません。そこでヒ素の水素化物を生成させ、これを加熱吸収セルに導いて測定するとバックグラウンドが低下するので、感度が高い定量が可能となります。

また、ヒ素をICP発光分光分析装置で測定する場合、その検出限界は193.696nmで10ppbほどとなり、感度はそれほど良くありません。そこでヒ素の水素化物を生成させ、これをプラズマに導いて測定するとおよそ1ppbの定量が可能となります。

したがって、「水素化物発生装置」は共通の構成要素で間違いありません。


「ネブライザー」、「ゼーマン分裂~」、「半導体検出器」、「分光器」、「水素化物発生装置」のうち、原子吸光分析装置とICP発光分光分析装置に共通の構成要素でないものは「ゼーマン分裂~」のみです。


正解は