2020年2月24日月曜日

第69回環境計量士国家試験(環濃)問2の解説

問2(第69回 環濃)
強酸の pH を計算して求める設問ですが、計算の過程が複雑で時間をかなり割かなくてはなりません。試験本番では後回しするべき問題ですが、試験対策として勉強するのであれば、重要ポイントをいくつか含んだ良問だと思います。

塩酸の pH を求めてみる!
例えば、濃度 1.0×10-3 mol/ℓ の塩酸は強酸なので、次のように完全に電離しています。


ですから、[H+] = [Cl-] = 1.0×10-3 mol/ℓ となります。
pH は次のように定義されていますから、この塩酸の pH は 3.0 です。

[H+] =10 mol/ℓのとき、pH=α


では、濃度 1.0×10-9 mol/ℓ の塩酸の場合、その pH は 9.0 なのでしょうか?

そんなはずありませんね。pH 9.0 はアルカリ性です。
塩酸をどんなに希釈してもアルカリ性には決してなりません!ただの水に近づくだけですから、その pH は水の pH より大きくなることはありません。


水の pH を求めてみる!
ところで、水の pH が 7.0 であることは周知の事実ですが、その pH を計算して求めてみたことはありますか?
ここが理解できていないと先には進めません。

水は塩酸と異なり、わずかに次のように電離しています。


ですから、H+ の濃度と OH- の濃度は同じです。( [H+] = [OH-] )
また、[H+] と [OH-] の積を 水のイオン積(Kwといい、その濃度は分かっています。

25℃のとき、
水のイオン積の濃度は 1.0 × 10-14 (mol/ℓ)2

[H+][OH-] = 1.0 × 10-14 (mol/ℓ)2 に、 [H+] = [OH-] を代入すると、

[H+]2 = 1.0 × 10-14 (mol/ℓ)2

[H+] = 1.0 × 10-7 (mol/ℓ)

したがって、pH は 7.0 となります。


さて、本題です。濃度 1.0×10-7 mol/ℓ の塩酸の pH を求めてみましょう!
上で解説したとおり、水はわずかに電離しています。
塩酸の濃度が高い場合、塩酸由来の H+ が水溶液中に多く存在するので、水の電離はあまり進まず、結果として水の電離については無視できます。

ところが塩酸の濃度が極端に低い場合、塩酸由来の H+ が水溶液中にほとんど存在しないので、水の電離は進みます。結果として水の電離については無視できなくなるのです。

というわけで、この濃度の薄い塩酸の中には次の3つのイオンが存在します。

H+  OH-  Cl-

そして、この3つのイオンの濃度の関係は次のようになります。


一番下の数式から二次方程式が作れそうです。


正解は3


参考文献
亀田和久『大学入試 亀田和久の理論化学が面白いほどわかる本』(138~142)

関連ページ
外部サイト:極端に希薄な強酸水溶液のpH(受験の月)