2021年5月30日日曜日

環境計量士(濃度関係)国家試験問題の解説(環化) 第71回(令和2年)問20

📁第71回(令和2年)

高校の学習範囲を越えたランベルト・ベールの法則についての出題だけど、実務で日常的にUV-Vis を使用した分析業務に就いている受験生は正解できて当たり前なレベルの問題。

はじめに、「ランベルト・ベールの法則」の基礎事項を確認しておこう。
吸光度(A)は濃度(c)とセルの厚み(L)に比例し、その関係式は次のようになる。

A = ε c L

たとえば、光路長(セルの厚み)10mmのセルを用いてある濃度のサンプルを測定したとき、その濃度(c)が低く十分な吸光度が得られなかったとしよう。こんなときは、より光路長の長い20mmセルや50mmセル、100mmセルを用いることで、その吸光度は2倍、5倍、10倍となる。

ε は物質固有の光吸収能を示す比例係数のことでモル吸光係数という。


基礎事項を確認したところで、さっそく問題を解いていこう。問題の主旨はこうだ。

光路長(セルの厚み)を t から2倍の 2t に変更するけど、透過率は50%のままにしたいから濃度を調整した。選択肢の中から調整後の濃度を選べ。

透過率を一定に保つのだから、吸光度も一定に保たれる。なぜなら、光の吸収の強さ表す吸光度(A)は、次のように定義されているからだ。

A = log10 ( 1 / T )

透過率(T)が一定なら、吸光度(A)も一定になる。
つまり、透過率を50%のままに維持したいのだから、吸光度(A)も維持されることになる。

「光路長 t の吸光度(A)」=「光路長 2t の吸光度(A)」

上のように両辺をイコールで結ぶのであれば、下のように右辺を1/2倍する必要がある。

「光路長 t の吸光度(A)」= 1/2 ×「光路長 2t の吸光度(A)」

なぜなら、ランベルト・ベールの法則より「光路長 t の吸光度(A)」= ε c t だが、「光路長 2t の吸光度」= ε c 2t だからだ。

ε c t = 1/2 × ε c 2t

以上より、濃度調整後の水溶液濃度(c)は 1/2 × c だからが正解。