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2020年4月23日木曜日

第70回環境計量士国家試験(環化)問15の解説

問15(第70回 環化)

難易度は高校で学習する数学の内容ですが、「双極子モーメント」という用語を見てパニック状態に陥ってしまうかもしれません。
というわけで、双極子モーメントの話をしてから問題を解いていくことにします。


双極子モーメント
硫化水素分子の電気陰性度は水素が 2.30、硫黄が2.59 です。そのため、硫黄原子側に共有電子対が引き寄せられていて、硫黄原子側がマイナスの電荷を帯びています。反対に水素原子側はプラスの電荷を帯びています。
このように電極が偏っているとき、結合に極性があるとか極性結合と呼びます。

硫化水素分子は結合部分だけでなく、分子全体の電極が偏っているので極性分子となります。


そして、極性分子がどれくらい極性なのか?これを数値化したものが双極子モーメントです。(今回はこの計算式の出番はないけど...)

双極子モーメント=電気素量×原子間距離×(イオン結合性 / 100)

ちなみに、二酸化炭素は結合に極性がありますが、分子全体でその極性を打ち消しあっているので無極性分子です。(両側から同じ力で綱引きをしているイメージです)
そして、無極性分子の双極子モーメントはゼロです。



設問を解いていきましょう。ここからは、数学のベクトルの問題です。
設問には「H-S-H の結合角は90°とする」とあるので、分子構造は左下の図のようになります。
そして、分子の双極子モーメントが 3.2×10-30 Cm ですから、これをベクトルで表すと右下の図の緑色のベクトルになります。


S-H の結合モーメント(青色のベクトル)を求めればよいので、下の図のように書き換えてから三角比を使って計算します。



以上より、正解は