1.ベンゼンの特徴
ベンゼンの炭素間の不飽和結合( π 結合)は安定しているので、この結合を破壊するような反応はなかなか起こせません。
その一方で、これを破壊しない反応、つまり、水素を別の元素に置き換える置換反応は起こりやすいという特徴があります。
たとえば、高校で学習する有名なベンゼンの置換反応の1つにニトロ化があります。
これは、濃硝酸と濃硫酸の混合液にベンゼンを少量ずつ加え、60℃で加熱すると下の図のようにベンゼンのH+が電子を求めるNO2+(求電子試薬)に置換される反応です。
2.ベンゼンに置換基Xが結合していたら、どうなる?
もし、ベンゼンに先客として置換基Xが結合していたら、NO2+はどの位置で置換反応をするのでしょうか?
考えられる位置は次の3つです。
3.どの位置に置換反応するのかは先客であるXが支配する。
Xが次に挙げる3つの場合、オルトとパラの位置が求電子試薬に置換されやすくなります。
- 非共有電子対を持つ原子(フェノールなど)
- アルキル基
- ハロゲン
これは、置換基Xがベンゼンの π 結合に電子を供給する働きがあるため、ベンゼン環の π 電子密度が大きくなり、オルトとパラの位置が電子を求める試薬(求電子試薬)に攻撃されやすくなる(反応性が活発になる)からです。
逆に、π 電子密度が小さいときのベンゼン環は、メタの位置が求電子試薬に攻撃されやすくなり、ベンゼンの π 結合から電子を吸引する働きがある置換基として、次のものがあります。
- ニトロ基
- スルホ基(-SO3H)
- カルボキシル基(-COOH)
- エステル(-COOR)
- シアノ基(-CN)など
4.参考文献
J. McMurry『マクマリー有機化学 第9版』東京化学同人(566~575ページ)亀田和久『亀田講義ナマ中継有機化学』講談社サイエンティフィック(115~133ページ)
亀田和久『大学入試 亀田和久の有機化学が面白いほどわかる本』(208~214ページ)
亀田和久『大学入試 亀田和久の有機化学が面白いほどわかる本』(208~214ページ)