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2020年5月13日水曜日

第70回環境計量士国家試験(環濃)問17の解説

問17(第70回 環濃)
どの材質の試料容器を使用するかは、規格や分析項目ごとに定められているので、1つ1つ覚えていく必要があります。その点、実務で携わっている人には有利かもしれません。

とは言ったものの、一般論ですが有機化合物が分析対象である場合、ガラス容器を使用します。

ポリエチレン瓶は、試料中の有機物を付着又は吸着する傾向があるため使用されません。重金属元素も吸着する傾向がありますが、硝酸や塩酸の添加による保存処理を行うことで防止できます。

以上を踏まえると、試験容器の材質がポリエチレンである選択肢ののどちらかが誤っていると推測されます。


 環告第59号を確認すると、次のように書かれていました。

『試料の採取にはガラス瓶又は硬質ポリエチレン瓶を用いる(あらかじめ硝酸でよく洗浄した後、水洗しておく)』

したがって、環告第59号のアルキル水銀分析方法における容器の材質は、硬質ポリエチレンで問題ありません。


 次に、環告64号を確認すると、次のように書かれていました。

『容量 1~5L の共栓付き広口ガラス瓶又はガラス製共栓付き広口三角フラスコであらかじめヘキサンでよく洗つておいたもの』

したがって、環告64号の排水中のノルマルヘキサン抽出物質分析方法における容器の材質はガラスですから、選択肢の組合せは誤りです。


正解は

2020年4月10日金曜日

第69回環境計量士国家試験(環濃)問17の解説

問17(第69回 環濃)
白金器具の洗浄方法に関する出題です。

「JIS K 0050 附属書F」に示された洗浄方法とは若干異なりますが、多くの分析現場では次のような洗浄を行っているはずです。

① 汚れや付着物がない場合
白金ルツボと塩酸(1+1)をビーカーに入れて、煮沸しない程度に静かに加熱する。

② 内壁に金属酸化物が付着している場合
二硫酸カリウムもしくは二硫酸ナトリウムを入れて、バーナーなどを用いて加熱融解したのち、内容物が冷却するまで放冷する。
内容物を温水で溶かし出したのち、白金ルツボと塩酸(1+1)をビーカーに入れて煮沸しない程度に静かに加熱する。

③ 外壁に何かが付着している場合
白金の表面に傷がつかないように、重曹粉末などを指につけて磨く。水で洗い流したあと、①の操作を行う。


さて、選択肢のを見てみましょう。
白金の表面は傷がつきやすいので、白金ルツボをクレンザー入り洗剤で洗浄したら間違いなく白金に傷がつき、上司はブチギレます。

正解は

2019年11月25日月曜日

マイクロピペットを使用する分析屋は信用できない⁉

マイクロピペットに関するアンケート

2018年の雑誌『医学検査』に川崎医科大学が行ったマイクロピペットに関するアンケートの調査結果が掲載されました。

このアンケート調査では岡山県近隣の91施設を対象とし、そのうちの81施設より回答が得られています。

さて、その気になる質問の内容と回答を見てみましょう。


「マイクロピペットの操作方法を学んだことがありますか?」

という質問に対し、約半数の施設が

「ある」

と回答し、そのほとんどが

「学生時代に学んだ」

との回答でした。
また、

「マイクロピペットの操作方法に関するマニュアルはありますか?」

という質問に対し、

「ある」

と回答したのは2.5%2施設のみ)でした。


つまり、ほとんどの施設において、マイクロピペットの操作方法が統一されていないことが推測されます。


「定期点検を行っていますか?」

という質問に対し、約7割の施設が

「行っていない」

と回答しました。

マイクロピペットはその利便性において、全量ピペットのようなガラス体積計よりも優れている反面、ガラス体積計のように容量を示す目盛が付いていないので、採取量が設定値とずれていてもわからないという欠点があります。ですから、定期的に重量法で採取量の確認を行う必要があるのです。

つまり、定期点検を行っていない施設のマイクロピペットは、採取量が設定値とずれている可能性があるわけです。


なかなか衝撃的なアンケート調査結果のように思えますが、個人的な感想を述べさせて頂くと

「やっぱりそうか...」

と妙に納得してしまいます。

私が知る分析機関は何処もかしこも、マイクロピペットの操作方法についてのマニュアルはありませんし、社内での講習会もありません。みなさん自己流です。定期点検ももちろん行っていません。

ですから、このアンケート調査の調査対象を全国規模に広げたとしても、その結果は今回のアンケート調査結果とほとんど変化ないでしょうね。

マイクロピペットの操作方法を学んだことのない化学分析屋が、設定値と採取量がずれたマイクロピペットを使用して分析を行う分析機関が全国にはたくさんある!のかもしれません。

怖い話ですね。


参考資料

古川聡子ほか:「マイクロピペットの操作方法が分注精度に与える影響と各施設における使用状況の調査」, 医学検査, 2018, 1, 44

2019年11月24日日曜日

そこの正社員!マイクロピペットは大切に扱え!

ガンガンガン!
ガンガンガン!

人気のない実験室に響く何かを叩きつける音。

「何の音だろう?」

わたしは音のする方へゆっくりと足を運ぶ。
広い大実験室の一番奥の実験台に、前かがみになった人影が見える。

「誰かな?」

もう少し近づいてみる。

ずんぐりむっくりとした体型...

「あれは中年正社員だ!何をしているんだろう?」

柱の陰から身を乗り出し、彼の手元を見た。
彼の手にはマイクロピペットが握りしめられており、それをチップが納められたラックに叩きつけていたのだった。

「ついに狂ったか!(いや元から...)」

彼はチップラックをガンガン叩いて、ピペットにチップを装着しているのだった。
この異常ともいえる行動は、実は彼だけではない。同じようにして、チップをピペットに装着する輩は多い。
そこで、マイクロピペットへのチップの正しい装着方法を調べてみることにした。


マイクロピペットへのチップの正しい装着方法とは?
私の手元にある4社のマイクロピペットの取扱説明書には『チップラックを叩いてチップ装着する』などという旨を記載している取扱説明書は皆無でした。

また、エッペンドルフ社の公式Twitterには次のようなツイートがあります。

「ピペッティングのコツその8!ピペットにチップを付けるとき、ガンガン叩いたり、ねじ込んだりしていませんか?実験室では見慣れた光景ですが、実はピペットの先端を傷める原因になります。その結果、精度が狂うだけでなく、リークが起こることも。チップを付けるときは適度な力でつけましょう。」

どうやら、ラックを叩いてチップを装着する行為はピペットに悪影響を及ぼすらしいです。(当然ですよね...)

では、取扱説明書に記載されているチップ装着方法を紹介しましょう。

A社:少し力を込めて、チップを装着してください。
B社:ピペットの容量範囲が適切なチップをご使用ください。チップが正確に装着されていることをご確認ください。
C社:装着は、チップラックからの装着をおすすめします。チップをひねるような脱着は行わないでください。
D社:気密性と安定性を確保するために、少しひねるようにしてしっかりと固定させてください。

メーカーによって多少の違いはありますが、自分が使用するマイクロピペットの取扱説明書を確認して、正しい操作方法を身に付けてください。
そして、マイクロピペットは精密機器ですから、大切に扱いましょう!


※この話はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。


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