マイクロピペットに関するアンケート
2018年の雑誌『医学検査』に川崎医科大学が行ったマイクロピペットに関するアンケートの調査結果が掲載されました。このアンケート調査では岡山県近隣の91施設を対象とし、そのうちの81施設より回答が得られています。
さて、その気になる質問の内容と回答を見てみましょう。
「マイクロピペットの操作方法を学んだことがありますか?」
という質問に対し、約半数の施設が
「ある」
と回答し、そのほとんどが
「学生時代に学んだ」
との回答でした。
また、
「マイクロピペットの操作方法に関するマニュアルはありますか?」
という質問に対し、
「ある」
と回答したのは2.5%(2施設のみ)でした。
つまり、ほとんどの施設において、マイクロピペットの操作方法が統一されていないことが推測されます。
「定期点検を行っていますか?」
という質問に対し、約7割の施設が
「行っていない」
と回答しました。
マイクロピペットはその利便性において、全量ピペットのようなガラス体積計よりも優れている反面、ガラス体積計のように容量を示す目盛が付いていないので、採取量が設定値とずれていてもわからないという欠点があります。ですから、定期的に重量法で採取量の確認を行う必要があるのです。
つまり、定期点検を行っていない施設のマイクロピペットは、採取量が設定値とずれている可能性があるわけです。
なかなか衝撃的なアンケート調査結果のように思えますが、個人的な感想を述べさせて頂くと
「やっぱりそうか...」
と妙に納得してしまいます。
私が知る分析機関は何処もかしこも、マイクロピペットの操作方法についてのマニュアルはありませんし、社内での講習会もありません。みなさん自己流です。定期点検ももちろん行っていません。
ですから、このアンケート調査の調査対象を全国規模に広げたとしても、その結果は今回のアンケート調査結果とほとんど変化ないでしょうね。
マイクロピペットの操作方法を学んだことのない化学分析屋が、設定値と採取量がずれたマイクロピペットを使用して分析を行う分析機関が全国にはたくさんある!のかもしれません。
怖い話ですね。
参考資料
古川聡子ほか:「マイクロピペットの操作方法が分注精度に与える影響と各施設における使用状況の調査」, 医学検査, 2018, 1, 44