2024年5月13日月曜日

環境計量士とガスクロマトグラフィー(1)

ここでは覚えるだけで得点に結びつく、ガスクロマトグラフィーの検出器についてまとめました。


電子捕獲検出器(Electron Capture Detector:ECD)

試験に最も出題される検出器です。
この検出器は有機ハロゲン化合物、ニトロ化合物、有機リン化合物、アルキル水銀などの電子親和性化合物を極めて高感度で検出します。
その原理を簡単に説明すると、検出器の内部はキャリヤーガスであるHeとメイクアップガスである窒素で満たされていますが、Heに対して窒素のほうが多いので検出器の内部はほとんど窒素で満たされていると考えてください。
そこへβ線が放射され、窒素のイオン化反応が進行します。

N2 → N2+ + e-

こうして検出器の内部は窒素由来の自由電子が常時一定量で存在していますが、ここへ電子親和性化合物という自由電子が大好物な成分がやってくると、自由電子の量は一時的に減ってしまいます。
ECDではこの自由電子の量を常時モニタリングし、その量が減った減らないで測定を行っているのです。


熱伝導度検出器(Thermal Conductivity Detector:TCD)

GCに限らず様々なガス分析装置で使用される検出器です。
この検出器は測定対象化合物とキャリヤーガス(He)との熱伝導度の差を利用し、キャリヤーガス以外のすべてのガス(O2やN2といった無機ガスも含む)の検出が可能ですが、感度そのものはあまり高くないため、比較的濃度の高い成分の分析に使用されます。
また、この検出器では測定対象の成分が破壊されないので他の検出器と直列につなぐことが可能です。


水素炎イオン化検出器(Flame Ionization Detector:FID)

有機化合物のほとんどすべてを検出することが可能ですが、カルボニル基やカルボキシル基のように酸素と二重結合している炭素には感度がありません。また、炭素に水素以外のもの(ハロゲンや硫黄など)が結合していると感度が下がります。

この検出器の原理を簡単に説明すると、空気と水素で形成された水素炎にカラムを通過した試料ガスが送り込まれると、炎の中で試料ガスの分子は分解されてイオンが生成されます。
生成したイオンは電極部(コレクター)で回収されますが、そのとき発生する電流の変化を検出しています。


炎光光度検出器(Flame Photometric Detector:FPD)

この検出器は還元性の炎中で化合物が燃焼する際に生成する励起化学種が発する特異的な波長の光を検出し、硫黄・りん・すずを含有する化合物を対象とします。
注意すべきは硫黄の検量線が二次曲線になる点です。
これは硫黄を含む化合物を燃焼・励起させるとS2の光が検出されるので、光量(シグナル強度)はS2量に比例しますが、S量に対してはその2乗に比例するからです。


第74回(2023年12月)

〔解説〕
1.ベンゼンはCとHの結合ですから、水素炎イオン化検出器(FID)で間違いありません。
2.アクロレインは分からないので後で考えます。
3.一酸化炭素のような無機ガスは、熱伝導検出器(TCD)で間違いありません。
4.メチルメルカプタンも分からないので後で考えます。
5.トリクロロエチレンは有機塩素系化合物、すなわち有機ハロゲン化合物なので検出器は電子捕足検出器(ECD)です。したがって、アルカリ熱イオン化検出器は間違いです。

〔正解〕5


第73回(2022年12月)

〔解説〕
1.熱伝導度検出器は測定対象化合物とキャリヤーガスとの熱伝導度の差を利用する検出器だから、測定対象化合物の熱伝導度とキャリヤーガスのそれとの差が大きいほど高感度に検出します。したがって、ここの記述は誤りです。

2.前半部分の「水素炎イオン化検出器は有機化合物のほとんどを対象とする」に誤りはありませんが、後半部分の「検量線の直線領域は2桁前後の狭い範囲に限られる」については正しいのか誤りなのか分かりません。したがって、正誤判定は先送りします。

3. 前半部分の「電子捕獲検出器は電子親和性の高い化合物を選択的に検出し、」に誤りはありませんが。後半部分の「検量線の直線領域は7桁前後の非常に広い範囲に及ぶ」については正しいのか誤りなのか分かりません。したがって、正誤判定は先送りします。

4.ここの記述に誤りはありません。

5.熱イオン化検出器は含窒素化合物及び含りん化合物を選択的、高感度に検出しますが、塩素は検出しません。したがって、ここの記述は誤りです。

〔正解〕4


第72回(2021年12月)

〔解説〕
電子捕獲検出器の検出対象は、有機ハロゲン化合物、ニトロ化合物、有機リン化合物、アルキル水銀などの電子親和性化合物でした。
選択肢の四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、ジクロロメタンはいずれも有機塩素系化合物、すなわち有機ハロゲン化合物ですから、ECDの測定対象になり得ます。これに対してベンゼンはCとHの結合なのでECDでは検出されません。

〔正解〕2


第69回(2018年12月)

〔解説〕
1.電子捕獲検出器は検出器内部に充満している窒素ガスにβ線を放射することで測定を行っていますから、塩素ガスは誤りです。

〔正解〕1


第67回(2017年3月)

〔解説〕
4.“電子親和性の高い化合物に対する電子捕獲反応を利用した検出器” とは電子捕獲検出器(ECD)のことであり、光イオン化検出器ではありません。

〔正解〕4


第60回

〔解説〕
電子捕獲検出器(ECD)は電子親和性化合物(有機ハロゲンやニトロ化合物など)に対して高感度を示す検出器です。

(ア)3と5の有機ハロゲン化合物以外は不適切です。

(イ)ハロゲンとは、周期表の17族に属するフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アスタチンの5つの元素の総称のことですから、塩素を含む3の塩化メチル水銀と5の有機塩素系農薬は適切です。

(ウ)3のカドミウムは重金属元素なので不適切です。一方、ポリクロロビフェニル(PCB)は塩素を含むので適切です。

〔正解〕5