2020年7月16日木曜日
第70回環境計量士国家試験(環濃)問18の解説
環境計量士のための Point 解説 不確かさ(3)
値付けの拡張不確かさ(k=2)は、値付け結果に対して±0.4%である
平均値±標準偏差の中に全データの約68%が含まれる
平均値±2×標準偏差の中に全データの約95%が含まれる
平均値±3×標準偏差の中に全データの約99.7%が含まれる
環境計量士のための Point 解説 不確かさ(2)
4.不確かさの算出方法
不確かさは、次の1~4のステップを経て見積もっていきます。
- 不確かさ要因をピックアップする。
- 不確かさ要因によってどのくらいばらつくのかを実験等で求め、標準偏差として表す。これを標準不確かさという。
- すべての不確かさ要因の標準不確かさを求めたら、それらを合成し、測定結果のばらつきである合成標準不確かさを求める。
- 最終的な不確かさは、この合成標準不確かさとして報告して問題ない。しかし、これを定数倍した拡張不確かさを用いて、「±拡張不確かさ」という信頼区間の形で報告することが一般的となっている。
これから試験でよく問われる太字の個所を1つずつ解説していきますが、その前に「不確かさ要因」の話を少しだけします。
「不確かさ要因」とは、測定結果にばらつきを与える要因のことです。
たとえば、試薬や水の純度が悪ければ、調製した溶液の濃度に影響を与えてしまいます。また、計量器具の公差が大きいと、溶液の濃度に与える影響も大きくなります。
このように、最終的な結果(濃度)に影響を与えてしまう試薬の純度や計量器具の公差は「不確かさ要因」としてピックアップされます。
5.標準不確かさ
標準不確かさの求め方には、タイプAとタイプBの2通りが『計測における不確かさの表現ガイド(GUM)』に規定されています。
タイプA
タイプB
5.1 タイプAの評価法
たとえば、小さじ1杯の食塩の重さについて繰り返し5回の実験を行ったところ、次のデータを得たとします。
ここで注意したいのは、標本標準偏差は標本平均のばらつき(母集団から標本を抽出したときの平均値の変動)ではないということ。
それじゃあ、この標本標準偏差は何を意味するの?って話になるよね。
標本標準偏差は、5回の測定値が平均的にどのくらいばらついているのかを表しています。しかし、私たちが知りたいのは標本平均のばらつきであって、5回の測定値のばらつきではありません。
そこで、標本平均のばらつきの算出方法を調べると、次のことが分かりました。
- 繰り返し測定を行ってデータを n 個取る。(小さじで食塩を5回秤量した。)
- そのデータから標本平均値と標本標準偏差を算出する。(標本平均が6.7g、標本標準偏差が0.5g)
- 標本標準偏差を√nで割る。
1と2については既にデータの算出まで終えているので、あとは標本標準偏差を√nで割るだけ。
繰り返し5回の実験を行ったのだから、標本標準偏差である 0.5 を √5 で割った 0.22g が小さじ 1 杯の食塩の標準不確かさとなる。
5.2 タイプBの評価方法
タイプBはタイプA以外の方法、すなわち実験を行わずにばらつきを算出する方法です。
具体的には、何らかの情報から測定結果が含まれる範囲(公差など)を見つけ出し、測定結果が矩形分布(一様分布)すると仮定する。そして分布の半幅を√3で割ることで標準不確かさを算出します。
たとえば、公差が±5mlのメスシリンダーを使用して水1リットルを計量した場合、公差である5mlを√3で割った2.89mlが標準不確かさとなります。
5.3 おまけ
ここから先は興味がなければ、飛ばしても構いません。
なぜ標本標準偏差を√nで割るのか?
矩形(くけい)分布とは?
2020年7月15日水曜日
環境計量士のための Point 解説 不確かさ(1)
「不確かさ」に関する設問は「化学分析概論及び濃度の計量」と「計量管理概論」の2科目から出題されている頻出テーマですが、「不確かさ」を解説する書籍はどれも実務者向けの難しいものばかりで、受験生向けの良い書籍が見当たりません。
そこで、僭越ながら低学歴・低収入な底辺派遣社員である私が環境計量士を目指す皆様のために、「不確かさ」について解説してみることにしました。
1.計量値とばらつき
統計学では、ある現象が大小さまざまの大きさで起こることを「分布をする」といいます。
たとえば、料理用の小さじで食塩を1杯計量したときの食塩の重さは、大小さまざまな重さになるので、小さじ1杯で計量した食塩の重さは分布をすると言えますね。
でも、私たち化学分析屋は「分布をする」と言わずに、「ばらつく」と言います。
この「ばらつく」という用語について、JIS K0211 と JIS Z8103 ではそれぞれ次のように定義しています。
2.パスタの茹で汁の塩加減
ところで、小さじ1杯で計量した食塩を1リットルの水に溶かせば、パスタ100gを茹でるのに適した食塩水の濃度になると言われています。
小さじ1杯で計量した食塩の重さがおよそ6gですから、食塩水の濃度はおよそ 6g/L です。
でも、小さじ1杯で本当に6gの食塩がきちんと計量できるのでしょうか?
つまり何が言いたいのかというと、計量した食塩や水の値は必ず「ばらつき」ます!ってこと。そして、このばらつきが食塩水の濃度に影響を与えるので、食塩水の濃度も「ばらつき」ます!ってことを覚えておいてください。
そして、「ばらつき」は必ず生じますから「真の値」というものを我々は知ることはできません。できることは「真の値」が存在するであろう範囲を統計学的に推測するぐらいです。
3.ばらつきと信頼
計量した値は必ずばらつくことを理解してもらったところで、こんどは「ばらつき」と「信頼」の関係について考えていきます。
ここに2種類の食塩水があるとします。
1つは1リットルの水に小さじ1杯の食塩を溶かした食塩水で、もう1つは1リットルの水にキッチンスケールで計量した6gの食塩を溶かした食塩水です。
さて、どちらの食塩水のほうが6g/ L の食塩水として信頼できるでしょうか?
もちろん、キッチンスケールで計量した食塩水のほうが6g/ L の食塩水として信頼できますね。なぜなら、キッチンスケールで計量したほうがばらつきが小さくなるからです。
つまり、私たちは日常的にばらつきが小さければ信頼できると評価し、ばらつきが大きければ信頼できないと評価しています。
ここで、話を少し応用してみましょう。
ばらつきの大小が信頼性評価の基準になるということは・・・
ばらつきを数値化すれば信頼性の評価も数値化できる!・・・ということになりませんか?
こうした方法で信頼を評価することを不確かさとよびます。
4.不確かさの定義について
わたしの記憶が確かならば・・・「不確かさ」の定義について試験で問われたことはありません。試験で問われるのは「不確かさの算出方法」です。
とは言っても、今後出題されることがあるかもしれないので紹介だけしておきます。
非常に難解な文章ですね。




