2020年7月16日木曜日

第70回環境計量士国家試験(環濃)問18の解説

問18(第70回 環濃)

不確かさ要因を比較する際に最も大切なこと、それは単位を揃えること!
この問いでは、希釈後の標準液の濃度(10mg/L)に影響を与える不確かさを知りたいのだから、単位は mg/L に揃えます。


1.拡張不確かさは、標準不確かさと違ってばらつきを表すものじゃなくて、測定結果の存在範囲を表すもの。

たとえば、問題文にある「拡張不確かさ(k=2)は 6mg/L とする」は、「この標準液の濃度は約95%の確率で、1000mg/L ± 6mg/L の範囲にありますよ」という意味なんだ。
(詳細はリンク先の Point 解説 不確かさ(3)を見てちょーだい。)

でも、ぼくらが知りたいのは測定結果の存在範囲ではなくて、希釈後の標準液の濃度(10mg/L)に影響を与える不確かさだ。

拡張不確かさは、合成標準不確かさに包含係数 (k) を乗じたものだから、拡張不確かさを包含係数 (k) で除すれば、合成標準不確かさが求められる。

だから、 希釈前の標準液の不確かさは 3mg/L になるわけだ。

ところが、ぼくらが知りたいのは希釈後の標準液の濃度(10mg/L)に影響を与える不確かさだから、これを100倍した 0.003mg/L が不確かさになる。


2.希釈前の標準液(1000mg/L)から 1mLを全量ピペットで採取するから、採取した 1mL に含まれる「ある成分」の量は 1mg 。

採取に使用した全量ピペットの標準不確かさが 0.004mL だから、これを「ある成分」の量に換算すると 0.004mg 。

これを全量フラスコを用いて水で100mLに希釈するのだから、0.004mg / 100mL より不確かさは 0.04mg/L になる。


3.100mLの全量フラスコには希釈後の標準液が入るから、ここでは希釈後の濃度(10mg/L)で考えなくてはならない。

希釈した標準液 (10mg/L)の1mL に含まれる「ある成分」の量は 0.01mg 。

そして、 希釈に使用した全量フラスコの標準不確かさが 0.04mL だから、これを「ある成分」の量に換算すると 0.0004mg 。

これが100mLの希釈液に含まれているのだから、0.0004mg / 100mL より不確かさは 0.004mg/L になる。


4.「標準偏差の相対値」とは、標準偏差を平均値で除した数値のこと。これの 0.1% という数値はとても小さな数値になることがわかる。

標準不確かさ=標準偏差だから、分析者の希釈操作に伴う調整濃度のばらつきは、のどれよりも小さくなるでしょう。


5.希釈に使用する水の量が99mLだから、99mLに含まれる「ある成分」の量は
0.17μg/L × 99mL より 0.0168μg 。

これが100mLの希釈液に含まれるのだから、その濃度は 0.0168μg / 100mL より 0.000168mg/L になる。


以上より、の中で希釈後の標準液の濃度に最も影響を与えるのはでした。