6.合成標準不確かさ
標準不確かさを合成するには、次に示す式を用います。
ここで、U1, U2… は標準不確かさ、Uc
は合成標準不確かさを表し、この合成標準不確かさが測定結果のばらつきを表す標準偏差です。
ここで再び、パスタを茹でる食塩水の濃度で考えましょう。
小さじ1杯の塩の標準不確かさが0.22g、1リットルの水の標準不確かさが2.89mlだったから、合成標準不確かさは次のようになると考えていいだろうか?
実はこれ、誤りなんだ。
なぜなら、0.22gと2.89mlでは単位が異なるから。単位が異なると不確かさは合成できないから、合成前に単位を揃える必要があるのよ。
私たちが知りたいのは食塩水の濃度の不確かさだから、その単位は g/L
になる。だから、小さじ1杯の食塩の標準不確さは 0.22g/L になる。
その一方で1リットルの水の標準不確かさを考えるには、ちょっと工夫が必要なんだ。
小さじ1杯の食塩の標本平均値が6.7gだったから、食塩水の濃度は6.7g/Lになり、これを食塩水1ml当たりに換算すると0.0067gの食塩が含まれていることになる。
1リットルの水の標準不確かさが2.89mlだったから、食塩水2.89ml当たりに含まれる食塩の量は
2.89×0.0067g より 0.019g になり、1リットルの水の標準不確かさは 0.019g/L
になる。
単位が揃ったので、2つの標準不確かさを合成すると、下の式より0.22g/Lになる。
ところで、「合成標準不確かさ」と「小さじ1杯の食塩の標準不確さ」が同じ数値(0.22)になったことに気づいたかな?
これは1リットルの水のばらつき(0.019g/L)が、小さじ1杯の塩のばらつき(0.22g/L)よりも一桁小さいため、合成結果に影響を与えられていないからなんだ。
つまり、1リットルの水のばらつきが不確かさ要因と見なされていないことを意味する。
不確かさ要因が多数ある場合、今回のように標準不確かさの数値が極端に小さい要因については、不確かさ要因とは見なされないから、計算から除外してしまったほうが効率的だということも覚えておこう。
7.拡張不確かさ
たとえば、ある金属A の濃度が1000mg/Lの標準液を購入したとします。
箱を開封すると標準液とJcss
のロゴマークの入った証明書が同封されており、その証明書には次のように書かれていました。
値付け結果 1003mg/l
値付けの拡張不確かさ(k=2)は、値付け結果に対して±0.4%である
値付けの拡張不確かさ(k=2)は、値付け結果に対して±0.4%である
これは、「この標準液の金属Aの真の値(濃度)は、約95%の確率で1003mg/l ±
0.4%の範囲内になりますよ」という意味です。
真の値(濃度)は神のみぞ知る値で、実際に求めることはできません。
ところで、この約95%っていう数字はどこからきたのでしょうか?
これは測定結果が正規分布すると仮定した上で、正規分布がもつ次の性質から説明できます。
平均値±標準偏差の中に全データの約68%が含まれる
平均値±2×標準偏差の中に全データの約95%が含まれる
平均値±3×標準偏差の中に全データの約99.7%が含まれる
証明書に「拡張不確かさ(k=2)」と書いてあったけど、これは「標準偏差を2倍しますよ」という意味で、この「k」のことを包含係数とよびます。
そして標準偏差である合成標準偏差を2倍すれば、それは約95%が含まれる区間の半幅を表す値になり、この値を拡張不確かさとよびます。
したがって、拡張不確かさは次の式で求められます。
拡張不確かさ (U) = 合成標準不確かさ (UC) × 包含係数 (k)
ここで再びパスタを茹でる食塩水の話に戻ろう。
パスタを茹でる食塩水の拡張不確かさ(k=2)を求めると、0.22g/L×2 より 0.44g/L
となる。
したがって、小さじ1杯の食塩から調製した食塩水の濃度は、約95%の確率で 6.7g/L
± 0.44g/L の範囲内になることが分かるね。
だいぶ長くなってしまいましたが、これで不確かさのお話はおしまい。
あとは演習問題を何度も繰り返して、不確かさの算出方法を身に付けてください。