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2025年4月12日土曜日

環境計量士と原子吸光分析法(1)

ここでは環境計量士試験対策として「JIS K0121 原子吸光分析通則」に規定されている「5.3.1 フレーム方式の原子化部」を中心に扱う。


「フレーム」って何?

「フレーム」とは、試料を原子化するための高温の燃焼炎のことで、その温度は約2000~3000℃になる。フレームは燃料ガスと酸化剤の燃焼によって発生し、その中で試料が加熱されて溶媒の蒸発・分解・原子化が行われる。

左下の画像は純水を導入した際のフレームの様子で、右下の画像は試料溶液を導入した際のフレームの様子だ。溶液に含まれる元素の種類とその濃度によって、フレームの様子が大きく変化している。



「フレーム」の燃料は?

測定する元素に応じて異なる燃料ガスと酸化剤を使用するが、[アセチレン-空気]が最も一般的で、多くの金属元素に適用できる。また、アルミニウムやチタン、バナジウムなどの高融点の金属元素には[亜酸化窒素-アセチレン]が使用される。

※[亜酸化窒素-アセチレン]を使用する場合、火口部を小さくしガス噴出速度を大きくした専用のバーナーヘッドに交換する必要がある。これは混合ガスの燃焼速度が速いため、バックファイヤー(逆火:火炎がガス供給側へ戻る現象)を防ぐためだ。


試料溶液がフレームに導入されるまでの過程

吸引された液体試料は下の画像で示すネブライザー(霧化器)によって、微細な霧状になる。この霧は図の左にあるグレーの球体(ディスパーサー)に衝突し、より細かい粒子のみが燃料ガス・助燃ガスとともに(ミキシング)チャンバー内に進み、バーナーヘッドのスロットからフレームに送り込まれる。
このとき粗い液滴はドレンシステムによって除去される。



フレーム内で試料が原子化するまでの過程

霧化した試料がフレームに入ると高温によって溶媒が蒸発し、固体の微粒子(塩や酸化物)になり、熱分解を経て金属原子または酸化物として気化する。フレーム内の高温により酸化物などの化合物がさらに分解され、中性の金属原子になることで測定波長の光を吸収できるようになる。
また、フレーム中での原子密度は元素・フレームの状態などによって異なるから、測定を開始する前に光源ランプからの光束を最適な位置になるように、バーナーヘッドの位置調整を行う必要がある。


バーナー(ヘッド)とは?

ここまで紹介してきた、試料を原子化するために燃料ガスと酸化剤を燃焼させ、フレームを生成する一連の装置を「バーナー」とよぶ。バーナーには、霧化された試料溶液の全量をフレームに送り込む「全噴霧バーナー」と、細かい粒子だけをフレームに送り込むバーナーを「予混合バーナー」がある。



最後に、アセチレンガスの取り扱い方法に触れておこう。試験に出題するポイントを規格から抜粋した。

  • アセチレンの容器は、アセトンの流出防止のため必ず直立のまま貯蔵又は使用する。(10. a. 5)
  • アセチレン用配管には、鋼または銅含有率が62%以上の合金を使用しない。(10. a. 6)
  • アセチレンは0.1MPa以上の圧力(ゲージ圧)で使用しない。(10. b. 5)
  • 緊急時対策として、アセチレン使用中はアセチレン容器の開閉用ハンドルを取り付けたままにしておく。また、弁は1.5回転以上開かない。(10. b. 6)

アセチレンは不安定なガスで、圧縮や衝撃によって爆発する危険性があるため、アセトンなどの溶剤に溶かして容器に充填されている。 また、アセチレンが銅などの金属と反応すると、爆発性のアセチライドを生成する。

アセチレンは不安定な化合物であり、0.2MPa以上の圧力になると、酸素がなくても自発的に分解反応を起こす可能性があるため、比較的安全に取り扱える圧力が設定されている。


【過去問演習】

第73回(2022年12月)

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 〔解説〕

2.試料溶液をチャンバー内に吹き込み、細かい粒子だけをフレームに送り込むバーナーが「予混合バーナー」だから、ここの記述は誤り。

以上より、正解は2


第71回(2020年12月)

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 〔解説〕

1.予混合バーナーがフレーム方式の原子化部であることは事実。したがって、ここの記述に誤りはない。

ただ、「原子化部の1つとして」という記述があると「予混合バーナー以外にもあるの?」と疑問に思う人もいるだろう。一応、該当する規格を載せておく。

5.3.1 フレーム方式の原子化部

フレーム方式の原子化部は、バーナー及びガス流量制御部で構成する。

a) バーナーは、(中略)予混合バーナー及び全噴霧バーナーとする。

b) ガス流量制御部は、(中略)圧力調節弁、流量調節弁などで構成する。

 つまり、フレーム方式の原子化部はバーナーとガス流量制御部で構成されていて、バーナーには予混合バーナーと全噴霧バーナーがあるってこと。

4.フレーム中での原子密度は元素・フレームの状態などによって異なるから、測定を開始する前に光源ランプからの光束を最適の位置に設定する必要がある。したがって、ここの記述内容は誤り。

正解は4


第60回(2010年3月)

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 〔解説〕

1.アセチレンは不安定な化合物であり、0.2MPa以上の圧力になると、酸素がなくても自発的に分解反応を起こす可能性がある。そのため、比較的安全に取り扱えるように「アセチレンは0.1MPa以上の圧力(ゲージ圧)で使用しない。」と規格の10. b. 5で設定されている。

したがって、ここの記述内容は誤りです。

正解は1