2022年9月18日日曜日

第72回(2021.12)化学分析概論及び濃度の計算 問25

📁第72回(令和3年12月)

毎年出題される「JIS B7954 大気中の浮遊粒子状物質自動計測器」に関する設問です。この規格に規定されている自動計測器は4つありますが、ベータ線吸収方式光散乱方式の2つが理解できていれば試験対策として十分です。


ベータ線吸収方式の原理

ベータ線吸収法は、低いエネルギーのベータ線を物質に照射した際に、その物質の質量に比例してベータ線の吸収量が増加することを利用した測定方法です。

実際のベータ線吸収方式計測器は次のような仕組みになっています。

① ろ紙上に浮遊粒子状物質を捕集する。
14C や 147Pm を線源とする低いエネルギーのベータ線を捕集した粒子に照射する。
③ シンチレーション検出器または半導体検出器で透過ベータ線強度を測定する。
④ ベータ線の吸収量の増加から質量濃度を求める。

光散乱方式の原理

大気中の浮遊粒子状物質(SPM)に光を照射すると、光が四方八方に散乱します。よく劇場などで見るサーチライトの光の筋が良い例です。

この散乱する光は、粒子状物質の質量濃度に比例して光量が強くなりますから、サーチライトの光の筋がはっきりと見える劇場ほど、劇場内の埃などが多いと言えるでしょう。

実際の光散乱方式計測器は、次のような仕組みになっています。

① 吸引ポンプ又はファンを用いて一定流量の大気を装置内に吸引する。
② レーザーダイオードやタングステンランプなどを光源とした光を、吸引した粒子に照射する。
③ 散乱した光を光センサによって検出し、電気信号に変換する。

選択肢を見ていきます。

1.ベータ線吸収方式は粒子をろ紙上に捕集し、これにベータ線を照射して透過ベータ線強度を測定するのであって、「捕集前後のろ紙の吸収量及び反射量の変化」は関係ありません。

2.ここの記述内容はベータ線吸収方式でも光散乱方式でもないので、とりあえず保留にしておきます。

3.ろ紙上に捕集した粒子によるベータ線の吸収量の増加から濃度を求める方法は、ベータ線吸収方式です。フィルタ振動式ではありません。

4.光散乱方式は粒子をろ紙上に捕集しません。

5.粒子による散乱光量から相対濃度を求める方法は光散乱方式です。吸光方式ではありません。

したがって、消去法で2が正解となります。