「JIS B 7983
排ガス中の酸素自動計測器」は、ほぼ毎回出題される超頻出テーマです。
過去の出題内容を踏まえ、酸素自動計測器についてまとめてみました。
- 酸素の常磁性を利用する磁気式
- 酸素の電気化学的酸化還元反応を利用する電気化学式
酸素の常磁性とは?
とりあえず、動画をご覧ください。
酸素でふくらましたシャボン玉がネオジム磁石に引き寄せられていますね。
このように酸素の常磁性とは、磁場がないときは磁化を持たない(磁石のような働きをしない)けれど、磁場があると弱く磁化する磁性のことです。
そして、この常磁性を利用した計測器が磁気式であり、磁気風方式と磁気力方式の2つに分けられますが、試験で問われるのは磁気風方式のほうです。
磁気風方式
磁界内で吸引された酸素分子の一部が加熱されて,磁性を失うことによって生じる磁気風の強さを熱線素子によって検出する。
言葉だけでの説明ではなかなか覚えられないので、図のように左右に分かれたガス流路を例にして磁気風方式について考えてみます。
このガス流路の左側は(永久)磁石によって磁力がかけられていますが、右側の流路には磁力がかけられていません。そのため、このガス流路に酸素を含む測定ガスを流すと、測定ガスは酸素が磁界に引き付けられて左側の流路を進みます。
ところがしばらくすると、左側の通路の流れが悪くなります。この原因は測定ガスが磁力によって留まってしまうからです。そこで、磁力がかけられている流路を加熱すると、加熱によって磁性を失った測定ガスが磁気風と称する風を生じさせます。
この磁気風の強さは測定ガス中の酸素濃度に比例しますから、風の強さを検出することでその濃度を求めることができます。
磁気方式の特徴
一酸化窒素も常磁性がありますから、これの影響がある場合は正確な測定はできません。したがって、磁気方式の干渉影響試験には、一酸化窒素を含む試験用ガスを用います。
次に紹介するジルコニア方式は、酸素の電気化学的酸化還元反応を利用する計測器で自動車など幅広く用いられています。
ジルコニア方式とは?
ジルコニウムの酸化物であるジルコニア(特に酸化イットリウムなどを添加した安定ジルコニア)は、500℃くらいの高温になると酸素イオンに対してのみ導電性を示します。この性質を利用した酸素濃度計をジルコニア方式とよびます。
測定の原理
たとえば、図のようなジルコニアに仕切られた左右2つの部屋があるとします。
左側の部屋は酸素が満員電車のごとくたくさん詰まっていますが、右側の部屋にはスペースに余裕があります。
そこで込み合っている左側の部屋から空いている右側の部屋へ移動を希望する酸素がジルコニアまでやって来ますが、ジルコニアは酸素を通してくれません。ジルコニアの言い分はこうです。
「酸素イオン以外は通さない!」
そこで、2つの部屋を仕切るジルコニアの両面に白金を取り付けて、それらを導線で結びます。
移動を希望する酸素がその白金に触れたその瞬間、次の反応が起きます。
O2 + 4e- → 2O2-(還元反応)
無事にジルコニアを通過した酸素イオンが再び白金に触れた瞬間、次の反応が起きます。
2O2- → O2 + 4e-(酸化反応)
つまり、酸素高濃度側では還元反応が、酸素低濃度側では酸化反応が起きることで、左右の電極間には酸素濃度比によって決まる(ネルンストの式から導き出せる)起電力が発生します。
このとき、左側に基準となるガス(たとえば空気)、右側に測定ガスを流すと、起電力は測定ガス中の酸素濃度のみに関係するため、このとき発生する起電力を測定することで酸素濃度を測定することができます。
このシステムは電解質溶液を用いたダニエル電池と同じです。
※測定原理の説明は1:40から
ジルコニア方式の特徴
ジルコニアを高温(500℃)の状態で使用しますから、試料ガスが高温でも測定が可能です。
しかし、未燃焼ガスを多く含む燃焼排ガスの測定では、ジルコニア素子の表面で未燃分が燃焼して酸素濃度が大きく減少するため正確な測定はできません。
したがって、ジルコニア方式の干渉影響試験には、一酸化炭素(未燃焼ガス)と酸素を含む試験用ガスを用います。