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2021年2月2日火曜日

環境計量士と化学熱力学(1)

熱力学を苦手としている化学分析屋は多い。それもそのはずで、化学分析の業務に熱力学はほとんど必要ないからね。

でも、試験に出題されるから勉強はしなきゃならない。

そこで、環境計量士(濃度関係)合格を目指しているけれど、仕事がクソ忙しくて勉強時間があまり確保できない非理系出身者向けに、身近な例を提示しながら合格に必要なポイントだけを伝えていこうと思う。


1.熱力学第一法則

たとえば、ペットボトル内部の気体を10℃ 温めたいとき、どうすれば良いだろうか?

直ぐに思いつく答えは、ペットボトル本体を暖めることだろう。ペットボトルを暖めることで(内部の)気体は外部から熱(Q)を吸収する。

しかし、内部の気体を温める方法はこれだけではない。内部の圧力を上げることでも温めることが可能だ。


熱力学では、物体を押したりする力学的なエネルギーのことを仕事という。動画で紹介されていたように、容器内部の圧力を上げると風船が空気に押されて小さくなった。これは、外部から内部の風船に対して仕事をしたことになる。

このように、内部の気体に対して外部から熱を与えたり仕事をすると、気体の温度が上昇し内部エネルギー(U)が変化する。その変化量は与えた熱と仕事の和に等しい。

ΔU = Qin + Win

※ Δ(デルタ)は「差」を意味する記号。つまり、ΔUは温める前と後の温度差を意味する。
※ Qはheat QuantityのQで、Qin は吸熱を意味する。
※ WはWorkのWで、Winは外部からされる仕事を意味する。

この法則を熱力学第一法則とよび、「エネルギーは保存される」ことを意味する。エネルギーは生成も消滅もせず、どんな変化が起きようとその総量は変わらない。

ペットボトル内部の気体を暖めるため、外界(容器の外)から熱と仕事という形でエネルギーを与えた。言い方を変えれば、外界のエネルギーをペットボトル内部のエネルギーに転移させたのだ。

その結果、外界のエネルギーは減少したが、減少した分だけペットボトル内部のエネルギーは上昇した。つまり、エネルギーの総量は変わっていない。


2.仕事

これまでは外界から内部へ仕事をすることが話題だったが、ここからは内部から外部へ仕事をすることに話題を移す。

動画内で加圧したペットボトルの栓を抜いたとき、ペットボトル内部の温度が下がった。これはペットボトル内部の気体が大気を押し上げる仕事をしたことで、ペットボトル内部の気体のエネルギーが消費されたからだ。

このように外界に対して仕事をしたとき、「-」の符号を付ける。

ΔU = Qin - Wout

仕事には①外界からされる仕事(Win)と、②外界にする仕事(Wout)の2種類があり、それぞれ符号が変わることに気を付けねばならない。