ICP-MSを使用するようになって数年が経ちますが、実はよく分かっていません...
- クールプラズマとノーマルの違いは何?
- 水素とヘリウムの使い分けは?
- 石英トーチに取り付ける白金は何の意味があるの?
まあ、こんな状態です。
もちろん、同僚や上司の正社員様たちに聞いてみたりしましたが、彼らも私と同じような状態でした。(大丈夫か?この会社...)
いろいろと自分なりにICP-MSについて勉強したので、学んだことをブログに書いていこうと思います。頭は悪いほうなので、難しい理論の話は少な目で。。。
四重極型質量分析計(QMS)
現在、普及しているICP-MSに搭載されている質量分析計のほとんどが四重極型質量分析計(QMS)だと思います。これは図のような4本の平行なロッド電極から構成されていて、向かい合う電極の極性を同じにして電圧を変化させることで、そこを通過できるイオンを質量数ごとに選別することができます。
QMS の弱点(同重体)
この QMS を搭載した ICP-MSは、この質量数別にイオンを選別する能力(分解能)があまり高くないので、目的対象元素とほぼ同じ質量数を持つ多原子イオンや同重体イオン、二価イオンを区別することはできません。
たとえば、Fe には質量数が54, 56, 57, 58の4つの同位体が存在します。この中で最も存在比の高い質量数は56ですから、通常はこの56を分析対象とします。しかし、多原子イオンである ArO の干渉に注意する必要があります。
なぜなら、ArO の質量数も同じ56だからです。ICP-QMS では質量数が56の Fe と ArO の選別ができません。
また、Ni には質量数が58, 60, 61, 62, 64の5つの同位体が存在します。この中で最も存在比の高い質量数は58ですから、通常はこの58を分析対象とします。
しかし、Fe にも同じ質量数である58の同位体が存在することに注意してください。ICP-QMS では質量数が58の Fe と Ni の選別ができません。
このように異なる元素で質量数が同じものを同重体と言います。合金鉄や鉄鋼中の Ni を測定する場合は前処理として鉄を分離する、もしくは質量数が60の Ni を分析対象とすべきでしょう。
QMS の弱点(二価イオン)
アルカリ土類金属や希土類元素の中には二価イオンを生成する元素があります。この二価イオンはマススペクトル上において、その半分の質量数を持つ元素として現れます。
例えば、質量数138の Ba の二価イオンは質量数69の Ga イオンと重なり、 ICP-QMS では Baの二価イオンと質量数69の Ga イオンの選別ができません。
このように QMS には弱点があります。これらの弱点をしっかりと把握することが ICP-MS を使いこなす第一歩です。
また、すべての質量分析計に共通することですが、質量分析計は真空状態でなければイオンを選別することはできません。なぜなら、空気中には窒素をはじめとする様々な分子が存在し、これがイオンの飛行を妨げるからです。
関連ページ