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2020年1月14日火曜日

真発熱量の計算方法 JIS M8814 (2003)

これから真発熱量の計算方法について詳しく見ていくわけですが、今回は「JIS M8814(2003)石炭類及びコークス類ーボンブ燃料計による総発熱量の測定方法及び真発熱量の計算方法」に記載されている内容のお話をします。

はじめに、前回の復習をしましょう。
まずは、総発熱量と真発熱量の関係式を思い出してください。

真発熱量=総発熱量ー水蒸気の凝縮熱

総発熱量は熱量計(カロリーメーター)という装置から得ることができますが、真発熱量は総発熱量のように装置から得ることができません。そこで上の式を利用して、総発熱量から水蒸気の凝縮熱を差し引いて求めます。
水蒸気の凝縮熱は、試料に含まれる水素や水分の含有量から計算して求める必要があるので、分析会社に真発熱量の測定を依頼すると、総発熱量と水素と水分の3つが必ずセットで付いてくるという話をしました。

今回は、この水蒸気の凝縮熱についてもう少し詳しく見ていきましょう。
水蒸気の凝縮熱とは、水蒸気が水になるときに放出される熱エネルギーのことで、このエネルギーは水が水蒸気になるときに吸収するエネルギー(気化熱または蒸発熱)と大きさが同じです。

凝縮熱=気化熱(蒸発熱)

そして 25℃における水の蒸発エネルギーは、41.53kJ/mol ということがわかっています。(これについては、規格のE.3.2に記載)

これを水の分子量(18.015)で除する(割り算をする)と、25℃における水1g当たりの水の蒸発エネルギーが分かります。

41530(J/mol)/ 18.015(g/mol)= 2305(J/g)

※ 水1%当たり(水0.01g当たり)に換算すると 23.05(J)です。


さて、前回のブログでお話しましたが、石炭などの燃料を燃焼した際に発生する水蒸気は、燃料に含まれている水素と空気中の酸素が反応して生成したものと、燃料に元々含まれていた水分由来のもの、2種類がありました。
ですから、水1g当たりの水の蒸発エネルギーだけでなく、水素1g当たりの水の蒸発エネルギーも求めておく必要があります。

水素の原子量が1.008、酸素の原子量が15.999 ですから、水と水素の関係式は次のようになります。
H2O/H2 = 18.015/2.016 = 8.9360 

つまり、水素1g は水8.9360g 相当となり、水素1g 当たりの水の蒸発エネルギーは、下の式より 20597.48 (J) となります。

2305(J/g)× 8.9360(g) = 20597.48 (J)

※ 水素1%当たり(水素0.01g当たり)に換算すると205.97(J)です。


水 1% 当たりの水の蒸発エネルギーと、水素 1% 当たりの水の蒸発エネルギーが分かったので、真発熱量を求める計算式を組立ていきましょう。

はじめに、全く水分を含んでいない試料について考えます。この場合、発生する水蒸気は全て試料に含まれる水素由来ということになりますから、真発熱量の計算式は次のようになります。

真発熱量(無水)=総発熱量ー206×水素の含有量(%)


次に、試料に水分が含まれていたときの計算式を組み立てるわけですが、今さっき求めた真発熱量(無水)に水分補正係数をかけます。

真発熱量(無水)×(1ー水分(%)/100)

「おいおい、水分補正係数って何だよ!」

と思うかもしれませんが、多くの方が日常生活で使用している計算式です。
例えば、スーパーで100円の商品に『5%引き』シールが貼られていたら、即座に

「95円だ!」

と計算できるはずです。
水分補正もスーパーの値引き計算と全く一緒です。燃料(試料)に含まれる水分値が5%の場合、真発熱量(無水)に0.95を掛ければ良いのです。


次に、水分補正した真発熱量から、試料に含まれている水分を由来とする水蒸気の凝縮熱を除きます。

真発熱量(無水)×(1ー水分(%)/100)ー 23.0×水分(%)

※ 23.0は水1%当たり(水0.01g当たり)の蒸発エネルギーでしたね。

こうして、水分を含んだ試料の真発熱量を求めることができます。


ちなみに、JIS M8814(2003)12. 備考25 には次のように記載されています。なにやら小難しく書いてありますが、内容は上で説明したことと全く一緒です。

qv,net,m=  (qv,gr,d−206w[H]d) ×(1−0.01 MT)−23.0 MT

qv,net,m:水分含量 MTの燃料の定容真発熱量(J/g)
qv,gr,d:無水(水分フリー)燃料の定容総発熱量(J/g)
MT:燃料中の全水分(%)
w[H]d:無水燃料の水素含量(%)


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