2025年1月24日金曜日

環境計量士と浮遊粒子状物質自動計測器(4)

ここでは JIS B 7954 に記載されている4つの測定原理のうちの1つ、「圧電天びん方式」を扱います。

JIS B 7954 の 5.2.2 では「圧電天びん方式」について

粒子を静電的に水晶振動子上に捕集し、質量の増加に伴う水晶振動子の振動数の変化量から質量濃度を求めるもの。

と記載していますが、簡単に理解できる内容ではなさそうです。まずは理解を妨げている点を1つずつ解消していきましょう!


疑問1 水晶振動子って何?

水晶振動子は、特定の周波数で正確に振動する特性を持つ水晶を利用した電子部品のことです。この性質が時計や通信機器、計測機器などの電子回路内で特定周波数の正確な発振に利用されているようです。


疑問2 水晶振動子の上に粒子を捕集すると、水晶振動子の振動数はどのように変化するの?

水晶振動子の振動特性は質量変化に非常に敏感で、水晶振動子の上に粒子が付着すると付加した質量に応じて振動数が低下するそうです。質量と振動数の関係は「Sauerbrey方程式」として知られています。


疑問3 測定対象である浮遊粒子状物質を水晶振動子上に付着(捕集)させる仕組みは?

JIS B 7954 の 5.2.2 c) に次の記載があります。

浮遊粒子状物質を静電捕集するため、高圧回路と針状の放電電極によってコロナ放電を発生させ、浮遊粒子状物質を帯電させる。

また、知らないワードが出てきました。
「コロナ放電」って何?

コロナ放電は、高電圧をかけた電極の周囲で発生する放電現象のことで、通常は尖った電極や細いワイヤーに正または負の高電圧を印加することで、電極周囲の空気分子が電離して放電が発生します。

発生したコロナ放電によって空気中に正もしくは負のイオンや自由電子が生成され、これらが浮遊粒子状物質と衝突し帯電します。帯電した浮遊粒子状物質は、静電的な力を利用して表面に電極を設けた水晶振動子に引き寄せられ、捕集されます。


疑問4 水晶振動子の上に捕集された粒子は、その後どうなるのでしょう?

JIS B 7954 の 5.2.2 e) に次の記載があります。

水晶振動子の上に静電捕集された浮遊粒子状物質を一定時間又は堆積量ごとに洗い流す。

具体的にはエアジェット、液体ジェット、超音波、ワイパー、加熱などの洗浄技術を活用して洗浄しているそうです。

以上「圧電天びん方式」の要点でした。


次は演習です。

第74回(2023.12)

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 〔解説〕

JIS B7954 の5.2.2 がそのまま出題されていますね。

圧電方式では粒子を帯電させ、静電的に水晶振動子上に捕集する仕組みでした。したがって、空欄(ア)には「静電」が入ります。
これで選択肢は2と4に絞られ、空欄の(イ)には「増加」が入ることまでわかりました。

電気を流すと水晶振動子は規則正しくプルプル震えます。その水晶振動子上に粒子が付着するとプルプル震える運動が付着した粒子に転移してしまい、振動数が減少します。
したがって、空欄(ウ)には「振動数」が入ります。

以上より、正解は2。


第73回(2022.12)

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 [解説]

1.圧電天びん方式では、コロナ放電によって浮遊粒子状物質が電子と衝突し帯電します。中和ではありません。
したがって、この記述内容は誤りです。

正解は1


第72回(2021.12)

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 [解説]

1.ベータ線吸収方式は、ろ紙上に捕集した粒子によるベータ線の吸収量の増加から質量濃度を得る測定方法です。問題文にある「捕集前後のろ紙の吸収量及び反射量の変化」の「反射量の変化」が誤りです。

2.規格の 5.2.2 の内容がそっくりそのまま出題されました。どこにも誤りはありませんから、これが正解です。

3.「フィルタ振動方式では~」の~部分がベータ線吸収方式の説明になっていますから、ここの記述は誤りです。

4.光散乱方式は、粒子に光を照射することで粒子による散乱光量からその相対濃度を求める方法ですから、ここの記述は誤りです。

5.「吸光方式では~」の~の部分が光散乱方式の説明になっていますから、ここの記述は誤りです。

正解は2