◆ Lambert–Beer(ランベルト・ベール)の法則
吸光度と「物質の濃度」および「光が通る距離(セルの厚さ)」との間には比例関係があり、これをランベルト・ベールの法則(Lambert–Beerの法則)といい、次の式で表せます。
吸光度を A、物質の濃度を c (mol/L)、セルの厚みを l (cm) とすると、
A = εcl
※ここで ε はモル吸光係数とよばれる値で物質固有の「光の吸収しやすさ」を示します。この値は、標準試料の濃度と吸光度の関係(検量線)を作ることで求めることができます。
◆ 吸光度とセルの厚さの関係
たとえば、物質の濃度が非常に低い場合、通常の 1 cm セルでは吸光度が小さすぎて正確に測定できないことがあります。 そんなときは、セルの厚さを長くすることで感度を上げることができます。
- 2 cm のセルを使えば吸光度は 2 倍に
- 5 cm のセルを使えば吸光度は 5 倍に
という具合に、セルの長さに比例して吸光度も大きくなります。
(解説)
1.誤り。
透過光 = 入射光(透過前の光)のとき、透過率は 透過光 / 入射光 より、1になります。
一方、吸光度は透過率を常用対数で表記したものなので、吸光度は0になります。
2.誤り。
測定系の光路長を2倍にしたとき、吸光度は2倍になりますが、透過率は2倍になりません。
吸光度が2倍になると A×2 = -logT2 より、透過率は2乗になります。
3.誤り。
透過パーセントが10%だから、透過率は0.1です。このときの吸光度は -log 0.1 より、1になります。
4.正しい
問題文は回りくどい言い方をしていますが、「同じ測定系を用いた場合(セルの光路長が一定の場合)、濃度を0.5倍にしたら、吸光度も0.5倍になりますか?」と聞いています。吸光度は溶液の厚さ(セルの光路長)と溶液の濃度に比例しますから、正しい内容です。
5.誤り
これも回りくどい言い方ですね。
「分析種 A のとき A = εcl 、 分析種 B のとき A = 0.5 εcl になる。l を定数としたとき、εcl = 0.5 εcl を満たすには右辺の c にどんな係数をかければいいか?」と聞いています。
もちろん、2です。
(解説)
問題文に「5.0×10-2 mol/l の溶液においてこの吸収ピークの透過率が1.0%であるとき・・・」とあるので、c = 5.0×10-2, T = 0.01 になります。
(ヒント:T = I / I0, log10 10 = 1)
これを −log10 T = ε c L に代入すると
−log10 10-2 = (5.0×10-2)ε L
2 log10 10 = 0.05 ε L
ε L = 2 / 0.05
ε L = 40
次に T = 0.1 、上で求めた ε l = 40 を −log10 T = ε c L に代入すると
−log10 10-1 = c × 40
1 = c × 40
c = 0.025
正解は1
(解説)
1.誤り。
入射光の強度を2倍にしても透過率(透過光の強度/入射光の強度)は変化しません。また、透過率の常用対数が吸光度ですから、透過率に変化がなければ吸光度も変化しません。
2.誤り。
測定成分の濃度が2倍になると吸光度は2倍になります。繰り返しになりますが、透過率の常用対数が吸光度ですから、吸光度が2倍になると、A×2 = -logT2より透過率は2乗になります。
3.誤り。
吸光度は透過率の常用対数ですから、透過率が2倍になっても吸光度は2倍にはなりません。
4.誤り。
A = εc l において、A と c が定数のとき、ε を2倍すると l は2分の1になります。
5.正しい。
A = εc l において、ε と c が定数のとき、l を2倍にすると A は2倍になります。
正解は5
(解説)
「80%の光が透過した」とあるので、透過率 T は0.8
吸光度 A = - log T より
- log (8/10) = - ( log 8 - log 10 ) = - ( log 23 - 1 )
log 2 = 0.30 だから
- ( log 23 - 1 ) = - ( 3 × 0.30 - 1 ) = 0.10
以上の計算より、吸光度は0.10
モル吸光係数 ε が4.0 、光路長さが 2 、これらを A = ε c l に代入すると
0.10 = 4.0 × c × 2
c = 1.25 × 102
正解は2
※ 高校数学Ⅱで学習した対数法則 r log a M = log a M r と log10 10 = 1 を使用します。



