前回、「定量下限値」と「相対標準偏差」の関係を解説した。
その関係は非常に密接であり、具体的な精度(相対標準偏差)を決定しておけば、「定量下限値」は自ずと決まる。いや、そうする以外に「定量下限値」を決めることはできない。
たとえば、相対標準偏差10%の精度を定量下限値に求めるのであれば、定量下限値はブランク信号の標準偏差の10倍を与える濃度になる。
また、相対標準偏差20%の精度を求めるのであれば、ブランク信号の標準偏差の5倍を与える濃度になる。
※何を言っているのか理解できない人はリンク先を読んでくれ。
(自称)ベテラン中年正社員は言う。
『定量下限値は基準値の1/10の濃度という決まりがある!』
そんな決まりねーよ(笑)
定量下限値は具体的な精度が示されることで意味をもつ。
「基準値の1/10の濃度」がいつでもどんなときでも無条件に示された精度を満たすとは限らない。それはただの目標値だ。
ところで「定量下限値は基準値の1/10の濃度」という話はどこからでてきたのか?
おそらく「土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン Appendix-17」ではないかと私は推測する。これには次のように書かれている。
- 地下水の水質分析では、定量下限値を地下水基準の1/10を目安とする。
- 土壌溶出量調査では、定量下限値を土壌溶出量基準の1/10 を目安とする。
- 土壌含有量調査では、定量下限値を土壌含有量基準の1/10 を目安とする。
どうやら「基準値の1/10」は目安であり、絶対条件ではないようだ。
(自称)ベテラン中年正社員は言う。
『検量線の最も低い濃度が定量下限値だ。ピークとノイズの区別がつかないほど低濃度でも、検量線は気合と根性で標準液を何回も測定していれば、そのうち相関係数が0.995以上になるから定量は可能だ。』
何言ってんだ、こいつ...
定量下限値は具体的な精度(相対標準偏差)を満たす必要がある。検量線の最も低い濃度がその精度を満たしているのであれば、それは定量下限値になり得るだろう。
ところが、検量線の最も低い濃度がその精度を満たさず、検量線の相関係数が『良い!悪い!』だけで判断しているのであれば、それは定量下限値になり得ないし、そうして得られた定量下限値に意味はない。
参考・引用したもの
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