2020年5月12日火曜日

第70回環境計量士国家試験(環濃)問16の解説

問16(第70回 環濃)
「JIS K 0303 排ガス中のホルムアルデヒド分析方法」は、よく出題されます。しかも、そのほとんどがサンプリング方法についての設問ですから、次の3つのポイントを押さえてください。

  1. ホルムアルデヒドの分析法としては現在、DNPH誘導体化―HPLC分析法が最も広く利用されています。
    (排ガス、作業環境、室内空気などで)
  2. サンプリング方法として、DNPH溶液を用いるインピンジャー法(吸収瓶法)がこれまで使用されてきましたが、現在は操作が簡単なDNPHコーティングしたシリカを充填したDNPHカートリッジ法(固体捕集法)が最も多く採用されています。
  3. DNPH誘導体化法における妨害物質として、二酸化窒素が挙げられます。二酸化窒素はDNPHと反応して、2,4-ジニトロフェニルアジトを生成し、これがクロマトグラフにおいてホルムアルデヒドと似通った挙動を示しすので、二酸化窒素の体積分率が10 vol ppm以下の場合に限り、DNPH誘導体化法が適用されます。

今回の設問は、ほう酸吸収瓶捕集による AHMT 吸光光度法についての出題です。おそらく知らない人のほうが多いと思いますし、わたしも知りませんでした。しかし、解くことはできます。この設問は、化学の基礎力があれば解けるように上手く作成されています。


設問の解説
問題文から酸化還元滴定であることが気付けましたか?それが攻略の第一歩です。次に、問題文から酸化剤と還元剤を探します。

酸化剤:ヨウ素溶液
還元剤:ホルムアルデヒド標準液、チオ硫酸ナトリウム溶液

ホルムアルデヒド標準溶液を三角フラスコにとり、そこにヨウ素溶液とを加えていることから、フラスコの中でホルムアルデヒドとヨウ素の酸化還元反応が起きていると推測できます。

空欄(ア)
過酸化水素は酸化剤もしくは還元剤としての役割がありますから、空欄(ア)に過酸化水素が入ることは常識的に考えられません。ホルムアルデヒドとヨウ素の一騎打ちの戦いに水を差すことになります。
したがって、選択肢はに絞られます。

空欄(イ)
「残留しているヨウ素を直ちにチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定」とありますから、フラスコ中のヨウ素は最初のホルムアルデヒドとの反応でほとんどが還元していると想像できます。そして、ホルムアルデヒドが仕留め損ねたヨウ素を、チオ硫酸ナトリウムで仕留める!というのがこの分析の流れですから、空欄(イ)に還元剤であるアスコルビン酸溶液が入るのは不自然です。
したがって、選択肢はは不適切となりに絞られましたので、これが正解です。

空欄(ウ)についても考えておきましょう。
ヨウ素溶液をチオ硫酸ナトリウムで滴定すると溶液の色は、黄褐色 → 淡黄色 → 無色と変化するので、淡黄色~無色の間で指示薬であるでんぷん溶液を加えて青紫色にし、無色になって点を終点とします。
したがって、選択肢のは誤りです。


正解は