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2020年3月20日金曜日

第69回(2018.12)化学分析概論及び濃度の計算 問5

第69回(平成30年12月)

超頻出の「JIS K0115 吸光光度分析通則」から、分光光度計に関する基本的な出題です。

はじめに、分光光度計について簡単にその仕組みを説明しましょう。

光源ランプの光を分光器でスペクトルに分ける(分光する)。
②分光して得られた光をスリットに通すことで特定波長の光を取り出す。
③取出した特定波長の光を試料に通す。
試料を通過した光を検出、信号処理して吸光度やスペクトルデータを得ます。
下線部分が設問と関連するので、解説していきます。

光源ランプ
光源ランプには紫外領域用に重水素ランプ(185~400nm)、可視・近赤外領域用にハロゲンランプ(タングステンランプ)(350~3000nm)を使用します。

ですから、選択肢の内容は誤りです。


特定波長の光を取り出す
スリットを固定し、分光器をその場で回転させると、回転につれてスペクトルの方向が変わり、スリットを通過する波長が変化します。



たとえば、黄色の光を取出したいのに分光器がきちんと回転せず、他の色を取出してしまうなんてことがあるかもしれません。そうならないように測定前に波長目盛の校正を行う必要があり、その方法(波長校正)として JIS K0115 には次の方法が記載されています。

①重水素ランプや低圧水銀ランプの輝線を用いる方法
②ガラス製光学フィルターを用いる方法

したがって、選択肢の内容に誤りはありません。


特定波長の光を試料に通す。
液体サンプルの測定を行う場合、セルとよばれる溶液サンプルが入った容器に特定波長の光を当て、その光の透過率(吸光度)からサンプルの濃度を定量します。

セルの材質によっては、その特定波長の光を吸収してしまう場合もありますから、材質による測定可能な波長範囲を把握しておくことが大切です。

一般的にガラス製のセルは紫外波長範囲での測定に適していませんから、この場合は石英製のセルを用いることになります。

したがって、選択肢の内容は誤りです。


試料を通過した光
サンプル溶液に光をあてると溶存する物質によって光が吸収され、サンプル溶液を透過する光は弱くなります。その割合のことを透過率、透過率の常用対数をとって正数としたものを吸光度とよびます。


選択肢の内容はモル吸光係数の説明ではなく、吸光度の説明ですから誤りです。


正解は