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2020年3月28日土曜日

第69回環境計量士国家試験(環濃)問7の解説

問7(第69回 環濃)
ICP 発光分光分析法の干渉に関する出題です。

はじめに、ICP 発光分光分析装置の仕組みを説明しましょう。

①試料溶液をネブライザーで霧化し ICP へ導入する。
②ICP で試料中の金属元素を励起発光させる。
③分光器でスペクトルに分ける(分光する)。
④選別された元素固有の発光スペクトル線を計測する。

①について
通常、ネブライザー(噴霧器)を用いて試料溶液をミスト化しますが、発生するミストの粒径分布は試料溶液の密度や粘性といった物理的なものによって決まります。
このため検量線作成用標準液と試料溶液の液性が異なる場合、それぞれの溶液の ICP への導入効率に差が生じてしまい、その差が分析値の誤差となります。これを物理干渉とよびます。

以上より選択肢の内容に誤りはありません。


②について
ICP 内に導入された元素は原子化され、励起されます。そして励起状態から基底状態に戻るときに発光し、このときの光を中性原子線とよびます。

その一方で原子化された後、ICP 内の電子との衝突によりイオン化する場合があります。むしろ、多くの元素が高い割合でイオン化しています。
イオン化した後に励起発光する光をイオン線とよび、このイオン線は感度が高いため多くの元素で分析線として用いられています。

ところが、アルカリ金属のようなイオン化しやすい元素を大量に ICP に導入すると、電子密度が増加します。その結果 ICP 内のイオン化が抑制され、中性原子線の発光強度は増加し、イオン線の発光強度は減少します。この発光強度の変化による分析誤差をイオン化干渉とよびます。

以上より選択肢の内容に誤りはありません。

次に、選択肢を見てみましょう。
選択肢3には物理干渉の原因として、プラズマ内の電子密度の増加が挙げられています。しかし、これはイオン化干渉の原因です。
したがって、選択肢3が誤りと判断できます。


③について
ICP 発光分光分析法では試料中に含まれるほとんどの元素が同時に発光します。その数1元素あたり1000本以上とも言われていますから、測定しようとする目的元素のスペクトル線の近くには共存物質のスペクトル線も多数存在し、これらが目的元素のスペクトル線と重なり、分析誤差となります。これが分光干渉です。

分光干渉には大きく分けて、分子・原子やイオンなどの細い発光線の重なり(近接線)と、Ar や他の分子などによる比較的幅広い発光によるバックグラウンド発光があります。

以上より選択肢の内容に誤りはありません。


正解は