2022年4月5日火曜日

アレン(allene)2つの π 結合が互いに直交する理由

1.アレン(allene)とは?

アレンは3つの炭素の間に2つの二重結合が連続した「C=C=C」の部分構造をもつ不飽和化合物の総称のことです。

3つの炭素が二重結合で結ばれているので、全ての原子が同一平面上にあるように思えてしまいますが、実際は図のようにグリーンの C=C と、ブルーの C=C の π結合は直交しています。

2. sp と sp2

C=C=C の構造を詳しく見てみると両端の炭素は「sp2 混成軌道」であり、中心の炭素は 「sp混成軌道」になっています。

「sp混成軌道」は炭素の電子4つのうち2つが「sp軌道」に存在し、残りの2つが「2p軌道」に存在しますから、2つの「sp軌道」は同じ平面上で互いに等しく距離を保つため、1本の線構造になります。一方、「2p軌道」の2つ(黄色と青色)は可能な限り相互に干渉しない位置をキープした結果、下の図のような形になります。

「sp2 混成軌道」は炭素の電子4つのうち1つが「2p軌道」に存在し、残りの3つ「sp軌道」に存在します。3つの「sp軌道」は同じ平面上で相互にに等しく距離を保った結果、正三角形の構造になります。

「2p軌道」は可能な限り「sp軌道」と関わらない位置(「sp軌道」の平面に対して垂直の位置)をキープした結果、下の図のような形になります。


※ sp とか sp2 が何のことだか分からない人は、リンク先の 炭素の混成軌道 を参照下さい。

3.直交する理由

それぞれの炭素を結合してみましょう。
「sp軌道」に存在する電子同士はシグマ結合し、「p軌道」に存在する電子同士はパイ結合します。

左側からも「sp2 混成軌道」の炭素をドッキングさせますが、黄色の「p軌道」と緑色の「p軌道」が反発してしまうので、手前にくるっと 90度回転させます。


このようにして、中心の炭素(sp)でねじれた構造の物質が出来上がります。