2021年9月25日土曜日

環境計量士(濃度関係)国家試験問題の解説(環濃) 第71回(令和2年)問23

📁第71回(令和2年)

問6に関連した出題。MSとMS/MSについての解説は問6と同じ内容です。


1つのMS(質量分離部)を持つ装置

LCやGCといった前処理部を通過した試料は、イオン化部でイオン化されたのち、質量分離部に導入されます。ここでは通過できるイオンを質量数ごとに選別することができます。

その選別方法は2つに分類され、1つはイオンの質量数を連続的に変化させ、マススペクトルを得ます。これをスキャンモード(全イオン検出法)と言い、定性分析に用いられます。

もう1つは通過できるイオンの質量数を指定することで、感度の良い定量分析が可能となります。これをSIMモード(選択イオン検出法)と言います。

※SIM:selected ion monitoring


以上より、選択肢1と2の内容に誤りはありません。


2つのMS(質量分離部)をもつ装置

この装置は2台のMSを直列に結合し、その間に衝突活性化室を挟んだ構造になっています。

原理としては、イオン化された試料を1つ目のMSで任意の質量数を指定し、特定のイオンのみを通過させます。1つ目のMSを通過したイオン(プリカーサーイオン)は衝突活性化室に導かれ、希ガスや窒素などの不活性ガスと衝突し開裂します。つまり、プリカーサーイオン由来の別のイオンが生成することになります。この生成したイオン群をプロダクトイオンとよびます。

新たに生成したプロダクトイオンは2つ目のMSでさらに質量分離されたのち、検出器へと導かれます。

このように2つのMSを通過することで2重にフィルタリングされる検出方法をSRMモード(選択反応検出)と言います。

※SRM: selected reaction monitoring


選択肢3の内容に誤りはありませんが、選択肢4はおかしな点があります。

第二アナライザー(2つ目のMS)を通過できるのは、特定の質量数をもつプロダクトイオンのみです。プリカーサーイオンは第二アナライザ―を通過することができません(第二アナライザーの手前で開裂してしまっている)から、第二アナライザーの後方にある検出器に到達することも当然できません。したがって、選択肢4の記述は誤りとなります。