問18(第70回 環化)
示差熱分析(DTA)とX線回折分析(XRD)経験者なら楽勝、知らない人にはクリアできない設問です。
XRD は知ってるけど、DTA は知らない人が多いかもしれません。
示差熱分析(DTA)は、試料を加熱する過程で起こる物理変化(融解や蒸発)や化学変化(分解や還元、酸化、吸着)に伴って発生する熱変化を検出する分析です。通常は重量変化も同時に検出しているので、熱重量・示差熱分析(TG-DTA)とよびます。
たとえば、TG-DTA で水酸化カルシウムを測定すると、400℃と600℃付近で吸熱ピークを伴う減量が発生します。
これは 400℃ 付近で水酸化カルシウムに含まれていた水分が蒸発し、600℃ 付近で大気中の二酸化炭素との反応により生成してしまった炭酸カルシウムの分解と推測されます。
このように、TG-DTA は昇温過程で起きる状態変化(相転移)を知ることができます。
さて、問題文を見てみましょう。
「~昇温過程において、( ア )により相転移による吸熱ピークが確認された。」
太字がヒントです。ここで示差熱分析(DTA)だと気づくはずです。
選択肢は2と4に絞られました。
X線回折分析(XRD)は、結晶構造の解析や無機物質の同定などが行えます。
試料(結晶)にX線を照射すると、結晶中の各原子(規則配列した原子)により X 線が散乱されます。散乱された X 線は、物質の原子・分子の配列状態(結晶構造、格子の大きさなど)によって物質特有の回折パターンを示しますので、これを解析することで結晶構造を知ることができます。
逆に、結晶構造を持たないものは測定できません。
再び問題文を見てみましょう。
「~ピークが消失したことから非晶質への変化が確認された。」
太字がヒントです。
X線回折分析(XRD)は、結晶構造を持たないもの(非晶質)は測定できない(ピークがでない)。
正解は4