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2020年4月22日水曜日

第70回環境計量士国家試験(環化)問14の解説

<問14>
アルキンの付加反応とマルコフニコフの法則に関する出題で、大学で学習する内容です。

はじめに高校で学習するアセチレンの付加反応についての解説をします。
硫酸水銀(Ⅱ) を触媒としてアセチレンに水を付加させると、ビニルアルコールが生成します。ところが、生成したビニルアルコールは非常に不安定な物質なので、直ちに異性化してアセトアルデヒドになります。


この反応はアセトアルデヒドの工業的製法でしたが、触媒として使用する硫酸水銀(Ⅱ)が大きな公害問題を引き起こしたため、現在ではヘキスト・ワッカ-法という別の方法に変わりました。

ですから、設問にある「硫酸と硫酸水銀(Ⅱ)を触媒としたエチニルベンゼンの水和反応」とは、三重結合部分への水が付加反応することです。

三重結合の部分には多くの電子が帯電しているので、それを目当てに H2O 由来のH+ が求電子攻撃をしかけます。

ここで問題です。
H+ は「ベンゼン環と結合した炭素」と「水素と結合した炭素」のどちらに攻撃するでしょうか?

二重結合または三重結合をもつ炭化水素に対してハロゲン化水素や水が付加するとき、結合している水素原子が多い炭素のほうに H+ が付加します。この経験則をマルコフニコフの法則と呼びます。
左側の炭素は水素原子と直接結合しているわけではないので、H+ は右側の「水素と結合した炭素」に結合します。


H+ が右側の炭素と結合すると左側の炭素は+に帯電するので、これに OH- が結合します。


生成した物質に注目してください。
二重結合している炭素に直接結合している -OH のことをエノール性ヒドロキシ基といい、非常に不安定です。
そのため、-OH は直ちに異性化してカルボニル基になります。


正解は