新人の分析屋さんが最初につまずくテーマではないでしょうか?
濃度計算をマスターすることで、あなたを分析作業者から分析技術者に成長させていくことでしょう。
そもそも添加回収試験とは?
添加回収試験とは分析法の正確さを確認する手段の1つです。
たとえば、ある試料に含まれるヒ素の濃度を知りたいとき、この試料を2つのグループに分けます。
そして、片方のグループには何も添加せずに前処理と測定を行い、もう一方のグループには既知濃度のヒ素を添加したうえで、前処理と測定を行います。
得られた2つのグループの分析結果を比較したとき、2つのグループの分析結果の差が添加したヒ素量と一致すれば、その分析法は正確だと判断されます。
以降、現場を想定した練習問題を用意しました。納得するまで、丁寧に計算して練習してください。
問題1
ある試料 2g にヒ素を 1ppm 添加したいとき、添加するヒ素の質量を求めなさい。
そもそも "ヒ素 1ppm" ってどんな量ですかね?
[ppm] に慣れていない人は [%] に変換して考えてみると良いでしょう。
たとえば、"ある試料 1g には 1% のヒ素が含まれている"場合、含まれているヒ素の量は0.01g です。
だって % = 1/100 だから、1g の1% は 1g × 1/100 より 0.01g になるよね。
これと同じようにして [ppm] も考えてみる。
ppm = 1/10-6 だから、1g の1ppm は 1g ×1/10-6 より
0.000001g です。
0.000001gでは0が多くて扱いにくいから単位を変換して...
0.000001g = 0.001mg = 1㎍
つまり、1g の 1ppm は 1㎍ です。
問題は試料が 2g だったので、添加するヒ素の量は 2㎍ です。
問題2
市販の濃度1000ppmのヒ素標準溶液を希釈して調製した濃度1ppmのヒ素標準溶液(比重1)があります。この溶液から
2㎍ のヒ素を添加したいとき、添加する溶液の体積量を求めなさい。
濃度 1ppm のヒ素標準溶液 1ml に、ヒ素が質量としてどれくらい含まれているのか、これをはじめに考えます。
溶液の比重が1だから、"ヒ素標準溶液 1ml" は "ヒ素標準溶液 1g"
に置き換えられますね。
そして、1g の 1ppm は 1㎍(0.000001g)でした。(問題1で計算したよ)
つまり、濃度 1ppm のヒ素標準溶液 1ml には 1㎍ のヒ素が含まれているから、添加する "ヒ素標準溶液" の量は 2ml です。
問題3
ある工場排水に 0.01mg/L のヒ素を添加したい。濃度 1ppm
のヒ素標準溶液から添加するとき、その添加量を求めなさい。試料は 100ml
をはかりとって分析するとします。
問題文にある " 工場排水に 0.01mg/L のヒ素を添加したい " とは、工場排水 1リットル にヒ素を 0.01mg 添加したいという意味です。
しかし、実際は 1リットルの 1/10 である 100ml をはかりとるのだから、ヒ素の添加量は 0.01mg の 1/10 である 0.001mg(1.0㎍)を添加することになります。
問題2より濃度 1ppm のヒ素標準溶液 1ml には 1㎍ のヒ素が含まれていることが分かっているから、添加する "ヒ素標準溶液" の量は 1ml です。