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2021年7月22日木曜日

環境計量士(濃度関係)国家試験問題の解説(環濃) 第71回(令和2年)問9

📁第71回(令和2年)

例年通り、問9は『原子吸光分析法』について出題されたね。おそらく来年も『原子吸光分析法』について出題されるはずだから、少しまとめておこう。

原子吸光分析法の4つのステップ

  1. 試料中の測定対象元素を原子化する。
  2. 原子化した元素に特定の波長をもった光を光源から照射する。
  3. 照射した光の透過光を分光器で必要な分析線だけを選び出す。
  4. 選び出された分析線を計測する。

原子化についてもう少し解説を付け加えおくね。

試料中の測定対象元素を原子化するには、フレーム方式電気加熱方式冷蒸気方式の3つがある。

フレーム方式はネブライザーでミスト化した試料溶液の一部を燃料ガス・助燃ガスとともにフレームに送り込み、その過程で脱溶媒→固体→原子化される。この一連の流れを行う部分をバーナーと呼び、試料溶液の一部を予め燃料ガスと混合するバーナーを予混合バーナーと呼ぶ。

電気加熱方式は、発熱体に大電流を流して試料溶液を乾燥・灰化・原子化するもので、その発熱体は黒鉛又は耐熱金属でできている。加熱炉の狭い空間に原子が高密度に発生するため、非常に感度が高い

冷蒸気方式は、水銀の分析に用いる。水銀は常温常圧で唯一の液体金属だから、加熱することなく原子蒸気化することが可能。その方法は試料溶液に還元剤(塩化スズ)を加えて還元気化させるので、還元気化方式と呼ぶ。
また、水銀は加熱することでも原子化することが可能であり、この方法を加熱気化方式と呼ぶ。


では、設問を解いていこう。

選択肢の4以外は既に解説した内容であり誤りはない。したがって、消去法で4が誤りということになるが、どの個所が誤りなのだろうか?

選択肢4
フレーム方式の分析装置において、フレーム中を通過する光束の位置は、分析するすべての元素種で常に同一にする。
 

フレーム中の原子密度の分布は、元素やフレームの状態などによってかなり異なる。そのため、光源ランプからの光を共存元素及び測定諸条件の影響の少ない最適な位置に元素種ごとに設定する必要がある。

その具体的な方法は、標準溶液を噴霧した状態で、吸光度をモニターしながらバーナーヘッドの位置を少しずつ動かして最適な位置を探す。最近では、自動制御で最適な位置を探す機能を備えた装置もあるらしい。

したがって、分析する元素の種類ごとにフレームを通過する光源からの光の位置を設定する必要があるので、『分析するすべての元素種で常に同一にする』という個所が誤り。

正解は